休憩所の中で休んでいると、清掃車の作業員風の方が入ってきた。
色々と話しかけてきてくれるが、言葉が分かりづらく、何度か聞き返してようやくその意味を理解できる。
私達が北海道から来たことを話すと、随分と驚いてくれた。
あまりゆっくりともしていられないので、お別れの挨拶をしてザックを背負い、再び歩き始める。
集落の間を抜ける急な道を登っていくと、その先の車道で、休憩所で会った方が車で先回りして私達を待ち受けていた。そして魔除けの鈴を一つ、私達に持たせてくれたのである。
昔の熊野古道はオオカミや熊も出没していたので、そこを歩く人達は杖に鈴を付けて歩いていたそうである。今はその鈴は魔除けの役割もあるという。
そんな説明をしながら鈴を渡してくれた。その鈴も、少し汚れていて、如何にも使い込んだようなものだったのが、余計に有り難みを感じてしまう。
思わぬ好意に感動しながら再び山道を登り始める。
ここから先、古道は人里から離れて山の中へと入っていく。
途中からまた雨が降り始めた。
杉林の中を歩いていると雨もほとんど気にならないけれど、それが途切れると結構な降りになっていることに気が付く。
途中の高原池の水面には、雨の波紋が沢山広がっていた。
大門王子の小さな社に手を合わせて先を急ぐ。
途中で杉林が途切れて眺めの良い場所があったけれど、遠くの山並みは完全に雨に霞んでしまっている。
十丈王子の手前に屋根付きの休憩所があったので、そこで昼にすることにした。
午前11時30分、歩き始めてから3時間半が経過していた。
昼食は熊野名物のめはり寿司である。
昨日、和歌山駅での乗り換えの際、駅の弁当屋で一個だけ売っていたのを買ってきたやつだ。
初めて食べるめはり寿司だったけれど、たっぷりと歩いた後に食べる弁当が美味しくないわけがない。
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