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天塩川

(音威子府 〜 中川)

 1997年夏のキャンプ旅行の目的は天塩川の川下り。
 いろいろと調べた結果、中川町のオートキャンプ場ナポートパークに泊まり、そこからJRで音威子府まで行けば、我が家の家族だけで川下りができそうだ。
 キャンプ場に到着し川の様子を尋ねたところ、キャンプ場ではカヌーの搬送サービスもやっており、希望の出発地点まで人間も一緒に運んでくれるということが解った。
 でも、ケチな我が家は料金4千円がもったいないので、予定通りJRを利用することにした。
 翌朝、カヌーを車に積んで音威子府の出発地点まで、そこは車で川岸まで入れて一応カヌー発着用に整備してあるような場所だ。そこにカヌーと愛妻、愛犬を残し、私と息子はキャンプ場近くの天塩中川駅に戻り、そこからJRに乗り音威子府まで行き愛妻と合流するという作戦だ。
 出発地、到着地も駅から徒歩で10分くらいなので、それほど苦にもならない。
 妻も70分くらい一人で待つことになるのだが、4千円のことを考えると全然平気だと言っている。さすがに主婦である。
 やっと出発というところになって事件発生、我が家の馬鹿犬フウマがちょっと目を離した隙に魚の内蔵らしき物体に体を擦り付けているのだ。恐る恐る臭いを嗅いでみると強烈な悪臭、何とか川の水で洗ったのだが、臭いはあまり取れない。先行きが思いやられるスタートになってしまった。
 天塩川ということでゆったりとした流れを想像していたのだが、障害物が川の中に隠れていたり、所々に瀬も現れたりと以外と気を抜けないコースに感じられた。
 川下りのベテランならば全然気にならないような流れなのだろうけれど、川下り3回目の我が家にとってはなかなか緊張させられる。
 途中で弱い雨が降り出したが、妻が念のために用意していた折り畳み傘が役に立った。傘をさしながらの川下りなんてちょっとお間抜けな光景だが、まあファミリーカヌーだからこんなのも良いだろう。
 雨が上がってからが大変、夏の太陽が照りつけると一気に気温が上昇してきた。日焼け止めクリームを用意していたのだが、これを持ってくるのを忘れてしまい、途中で妻と息子は火傷寸前の日焼け状態、ここでまた先ほどの折り畳み傘が役に立った。
 日傘をさしながらの川下り、ちょっと人には見られたくない光景だ。
 それでも暑さだけはどうしようもない。これが清流ならば水の中に飛び込めるのだが、天塩川の水ではなかなかその気にもならない。でも、結局最後には耐えきれなくて浸かってしまった。
 それにしても、さすがに長い距離である。正確な地図も持っていなくて、橋の数も少ないのでどれくらい進んだのかがわからない状態だ。キャンプ場で聞いたところでは4時間半くらいと言われていたのですが、その時間が過ぎても目標にしている佐久橋までも達していない。
 さすがに家族のことも心配になり、佐久で上陸してそこからJRで車を取りに行こうかと提案したのだが、みんな最後まで行くとのこと、こうなったら頑張るしかない。
 そうこうするうちにやっと佐久橋が見えてきた。
 ようし、もう少しだぞと気合いを入れたのだが、今度は地獄の向かい風。結構波があるので流れが速いのかなと思ったら、どうやら向かい風による波のようだ。佐久橋を通り過ぎ時々後ろを振り向くのだが、いっこうに橋から遠ざかっていないように感じられる。
 途中で広い河原があり上陸し、妻は変わった形の石集め、息子は自由研究用の細工できそうな流木探しとそれなりに元気なのだが、正直言って私はへろへろ状態、それでもゴールまではもう少しのはずだ。
 幸い、いくらか風も弱まってきて後は何とかなりそう。途中、イワツバメの巣の集団に感激したりと最後のゴールに向けて順調である。
 しかし、天塩川もこの辺になると牛の屎尿の流れ混みが多くなるのか、臭いもかなりひどくなってくる。最後の瀬に突入したときも、水の飛沫が明らかに屎尿の臭いをたてていた。
 最後のカーブを曲がるとついにゴール地点の橋が見えてきて、家族一同大歓声である。
 全部で休憩も入れて6時間半の行程だったが、これまでのちょっとした距離の川下りと比較して大きな充実感が残る川下りであった。


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