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湧別川

(上湧別橋〜河口)

 湧別川例会の二日目は、いよいよオホーツク海を目指す。
 集合場所は昨日と同じ丸瀬布道の駅。
スタート地点 今日こそは沢山集まるかなと思ったら、キャンプをしていたメンバー以外に新たにやってきたのはK島さんだけ。
 S吉さんの奥さんが体調不良でこの日は下るのをやめたので、今日も10人の川下りである。
 道の駅を出て、湧別町のチューリップ公園の駐車場で再集合し、各自お腹の具合を再確認してから、スタート地点の上湧別橋へと向かうことにする。
(この辺りの詳細はキャンプ日記参照
 河口へ車を回送し、ようやく川下りを始めたのは、最初の集合から2時間近くを経過した11時50分である。
 海を目指すためにはその準備にも時間がかかるのだ。

 天気は薄曇り。
 風は最初から向かい風だ。
 この先、海に出るまでずーっと向かい風が続くと思うとうんざりしてしまうが、水量が多いので川の流れも速く、それほど風を気にせずに下ることができそうだ。
 皆それぞれ、川の流れに舟を任せて、のんびりと下っていく。
休憩中 適当な河原があったので、そこで昼食にすることにした。
 スタートしてからまだ20分しか経っていない。
 でも、ほとんど全員がお腹の中が空っぽの状態なので、腹が減っていたのだ。
 スタート前のミーティングでは、「途中で具合が悪くなった人は手を挙げてツアーリーダーに告げてから、茂みの中へ入っていくこと」と注意を受けていたが、幸いそんな人もいないようである。
 ドライスーツを着たまま、お漏らしすることだけは絶対に避けなければならない。
 かみさんが河原で黒曜石を見つけた。探してみると、そこら中にいくらでも転がっていた。
 他のメンバーも参加して、黒曜石探しを始める。
 黒曜石は別名十勝石とも呼ばれ、十勝の川でよく見つけることができるが、ここ湧別川の方が沢山ありそうだ。
 上流の白滝には黒曜石の露頭があり、地元ではジオパーク構想も立てられているそうなので、湧別川に黒曜石が沢山あるのもうなずける。


皆で黒曜石探し   黒曜石
突然黒曜石探しが始まった   我が家が持ち帰った黒曜石

分流を下る 再び川にカヌーを浮かべる。
 この辺りでは分流も多くなり、どちらに進むか迷うことも度々だ。
 それぞれの判断で、自分の好きな分流を選ぶ。
 よっぽど細い流れに入り込まない限りは、どこを下っても問題はない。
 それが当たりか外れかは、再び合流したところで判断できる。
 当たりの分流は流れが速く、合流後は先に出ることができるのだ。
 こんな川を下る時に楽をするためには、一番流れの速い部分を確実に見極めて、その中を下ることが必要なのである。
 流れの中の所々に流木が引っかかっている。
 川幅も広がっているので余裕を持ってそれを避けることができるが、水が少ない時はどうなのだろう。
 思わぬところで流木に行く手を塞がれることもありそうだ。
 河畔林に引っかかったゴミなどの様子を見ると、つい最近まではもっと増水していたようだ
 今日くらいの水量が一番下りやすいのかもしれない。


集合写真
川下りの途中で記念撮影、お尻を押さえているのは誰?

流木   増水の跡
流れの中は流木だらけ   川岸には増水の跡が

我が家 橋の下を通り抜ける度に空がますます広がってくるような気がする。
 楽しい瀬があるわけでもなく、クラブの例会でこんなところを下って皆は退屈しないだろうか。
 最初はそんな心配もしていた。
 でも、他のメンバーの楽しそうな表情を見ていると、それは余計な心配だったようだ。
 清流のホワイトウォーターでも、蕩々と流れる大河でも、川下りの楽しみはどちらも同じなのである。
 今回の例会で、海まで下ることを提案したのはI山さんだった。
 最初に私が考えた案では上流部も下るつもりだったが、下見をしたI山さんは「水量が多すぎるので上流部は危険、その代わりに海まで下りましょう」との意見。
 I山さんは過去に、厚田川を下って日本海へ出て、歴舟川を下って太平洋に出てことがある。
 これで湧別川を下ってオホーツク海に出れば三海制覇できる、との全く個人的な理由で決めたと言うのが真実のようだけれど、こんな単純な考えも良いものである。


中湧別橋   湧別大橋
水位が下がって堰堤越えも楽ちん   GWの時の堰堤、これではポーテージも大変

一号橋 海への最後の橋である一号橋を抜けると、いよいよ海が近づいてきたことを実感する。
 やがて、回送しておいた自分たちの車の姿が見えてきた。
 薄曇りの空なのがちょっと残念だけれど、それはそれでオホーツクらしい空だ。
 先頭を下っていたY田さんが、車の近くの岸辺に上陸する。
 しかし、後続のメンバーはその横を次々と通り過ぎていく。
 ここまできたら、川の上から直接海の姿を見たくなるのが心情である。
 


海はもうすぐ   車が見えた
海はもうすぐだ   車が見えた

河口の航空写真

 でも私は、Googleの航空写真で河口の様子を知っていたので、それは無理だろうと考えていた。
 普通の川ならば直接海に流れ出ているのだが、湧別川の場合は400mの突堤に囲まれて河口が海に突き出た形状なのである。
 普通の川でも海にそのまま漕ぎ出すのは危険とされているのに、これでは海の真ん中に放り出されるようなものである。
 おまけに、増水して川の流れも速くなっていると思われる。
 これで河口に向かうのは無謀としか言いようがないが、海の姿が見えた当たりで引き返してくれば、一応はオホーツク海に到達した気分だけでも味わえるだろう。
 そう考えて、私もその後に続くことにした。
 いったん上陸したY田さんも、再びカヤックに乗り込み漕ぎ出してくる。
 海に近づき、更に向かい風も強まってくるが、これは逆に帰りが楽になる事でもある。
海が見えた そうして突堤の中に入ってくると、とうとうその先にオホーツク海の姿が見えた。
 その様子は意外なほど穏やかなものだった。
 皆は途中で止まる素振りも見せずに、どんどんと海へ向かって漕ぎ進んでいく。
 川の流れも思っていたほど速くはない。
 ちょっと戸惑いながら、私達も遅れてその後に付いていく。
 突堤の先端で釣りをしている人たちが私達の方を眺めている。
 こんなところにカヌーの一団が現れて、さぞ驚いていることだろう。
 波は無くても、さすがに海に近づくとうねりが出てくる。
 そうしてとうとう突堤の先端を超えた。
 目の前には何もないオホーツクの海が広がっているだけだ。これは川を下ったものにしか分からない感動的な風景である。
ついに海の上へ 「記念写真を撮ろうよ」
 「えっ?」と思いながらも皆のところへ近づこうとした時である。
 誰かが叫んだ。

 「流されてるぞ!」

 その言葉と同時に私達はくるりとUターンして必死に漕ぎ始めた。
 自分の命を守るための全く反射的な行動で、他のメンバーの事など考えている余裕もない。
 横を見ると、一番後ろから付いてきていたF本さんも必死のパドリングである。
 しかし、私達もF本さんもなかなか前に進まない。
 海のうねりが私たちのカヌーを大きく上下に揺らす。
 そしてそのうねりはそのまま消波ブロックにぶつかり、真っ白になって砕け散る。
 消波ブロックに近づかないように、そして一刻も早く突堤の内側までたどり着けるように懸命のパドリングを続ける。


我が家も海へ   突堤の先端
我が家も遅れて海上へ   突堤の先端を超えた

 ようやく突堤の中に入ったところで後ろを振り返る余裕ができた。
 他のメンバーはまだかなり離れていた。
 カヤックの人たちは大丈夫だろうが、OC-1のI田さん、シングルパドルのI山さんもしかしたら駄目かもしれない。
 しかも、I山さんはかなり消波ブロックに近づいてきていた。
 かみさんの義理の兄が海上保安庁にいるので、もしもの時は何とかしてくれるだろう。
 突堤の中に入っても、なかなか前に進まないことに変わりはない。
命拾いのI山さん 再び前を向いて必死に漕ぎ始める。
 あれだけ吹いていた風も、その時には何の役にも立っていない感じだ。
 そしてようやく突堤の付け根の浅瀬に上陸することができた。
 カヤックのメンバーも、やっとそこまでたどり着く。
 大きく遅れて、O橋さんとS吉さんが乗ったカナディアン、OC-1のI田さん、そして最後に、海の藻屑になるかと思われたI山さんが精根尽き果てた表情で漕ぎ付いた。
 まさに危機一髪の生還劇であった。
 皆の無事を祝ってそこで記念撮影。
 そこから車を停めてある場所までは、もう誰もこれ以上漕ぐ力は残っていなくて、カヌーを引っ張って泥に足を取られながら岸辺を歩いて戻ったのである。

最後の記念撮影   もう漕ぐ力は無い
無事に全員で記念撮影   これ以上漕ぐ力は残っていない

 そうして二日間に渡った湧別川のダウンリバーは終了。
 色々と事件はあったけれど、こんな例会の方が楽しいのは確かである。
 適度な水量、天気にも恵まれ、湧別川の魅力を満喫、海に出た感動も大きかった
 ただし、川から海に出る時だけはくれぐれも注意したいものである。



2010年5月16日 曇り時々晴れ
当日12:00 湧別川水位(丸瀬布観測所) 174.95m
(開盛観測所) 51.03m



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