既に昼を過ぎているので休憩したいところだけれど、増水しているせいか川原が何処にも見当たらない。
腹を空かせた228君が、「何処でも良いから上陸したい〜」と駄々をこね始めた。
そうは言っても、草むらの中で休憩するのではゆっくりできない。
ペペケナイ川が合流する辺りに川原がありそうなのは知っていたけれど、まだ暫く先である。
再び前方に瀬が現れた。
これまでの瀬は、流れの中に白波が立っている様なものばかりだったけれど、その瀬は白波の間に岩も見え隠れしていて、如何にも瀬らしく見える。
先頭を下っていた、今回のツアーリーダであるY谷さんが、岩盤が露出している岸を見つけて舟を寄せた。
日陰もあって、理想的な休憩場所である。
付近は一体が岩盤状の瀬になっていて、天塩川らしくないところが良い。
どうやらそこが、楠の瀬と呼ばれている場所だったらしい。
kenjiさんがカナディアンをひっくり返して、中の泥を洗い流しているのを見て、私も真似をする。
泥水で泥を洗い流すようなものだけれど、流れが淀んでいる場所よりも少しは水の透明度も回復していて、10センチくらいの深さならば川底まで見透かせる。
K鍋さんのファルトにO橋さんが試乗する。
同じカヌーでも、乗る舟によって川の楽しみ方も変わってくる。
もしかしたらO橋さんも、ファルトで下れば、天塩川は良い川だと言い始めるかもしれない。
一休みを終えて再び下り始める。
その先で待ち構えているのは、この区間一番の難所である豊清水の瀬だ。
流れがロート状に一箇所に集まって大きな波ができているらしい。
遠くからでもその白波が見えて、さすがにちょっと緊張する。
ロート状に水の集まる瀬は他の川でも何度か経験しているけれど、ロートの出口には三角波が立って、危ない思いをしたこともある。
ゆっくりと近づいていくと、その瀬の全ぼうが明らかになった
豊清水の瀬は、これまで下ったロートとは比べ物にならないような大きさだった。
本当はもっと小さいのだろうが、増水の影響で幅が広がっているのである
でも大きな分、何処からでもロートの外に抜け出すことはできるし、その先端にできる波も大した大きさではない。
次々とそのロートの先端に向かっていく他のメンバーの後から、我が家は相変わらず水が入るのを嫌って、途中からロートの外へと逃げ出した。
この先、天塩川温泉までは瀬も完全に無くなり穏やかな流れが続いている。
気温も更に上がってきたようで、堪らずにカヌーの外に足を出して水に浸ける。この際、泥水がどうのとは言ってられない。冷たい水が気持ちよかった。
カヌーの上で寝転がっても、周りに障害物が無いので安心していられる。大河の懐に抱かれているような気持ちだ。
そうして天塩川温泉下の川原に到着。
道北の大河天塩川で自由に目覚めた人、退屈で堪らなかった人、最後まで泥水をかぶることなくホッとした人、それぞれの思いでダウンリバーを終えたのである。 |