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大雪山縦走(2016/07/20〜21)

1〜2日目(層雲峡温泉〜忠別岳避難小屋)


上川駅からバスに乗車7時21分札幌発のオホーツク1号に乗って、上川駅到着は9時40分。
そこから9時50分のバスに乗り、層雲峡へ到着したのは10時20分。

公共交通機関を利用して札幌から層雲峡へ行くとしたら、多分これが一番早い到着時間になるはずだ。
山に登るにはちょっと遅すぎるが、この日は黒岳石室に泊まる予定なのでちょうど良い時間である。

退職後にやりたいことの一つであった大雪山の縦走が、いよいよここから始まる。
温泉街からはこれから登る黒岳の姿が、真っ青な空を背景にして鮮やかに見えていた。

黒岳ロープウェイで5合目まで登り、そこのレストハウスで豚丼と蕎麦の黒岳セットを食べる。
これから3日後にトムラウシ温泉へ下山するまでの、最後のまともな食事である。


黒岳
ロープウェイ5合目駅から望む黒岳

ここまで来ると黒岳の山頂も直ぐ近くに見えるが、更にリフトに乗って7合目へと向かう。
そうして11時55分、リフト終点の標高1520mから登り始める。
標高1984mの山頂まで標高差464m。
何時もの山登りと比べれば楽勝だけれど、山頂までひたすら急登が続くので結構きつい。

急登が続く黒岳へ登るのはこれが2度目だけれど、5年前の前回は源泉台から入って層雲峡へと下山する縦走だったので、この登山道は降りたことしかないのである。
降りる時さえ辛かったのに、それを登るのだから大変である。

でも、天気も良く、ウコンウツギやシナノキンバイの花が沢山咲いていて、辛い登りも苦にならない。
ところが、いつの間にか雲が広がってきて青空を完全に隠してしまった。
「一時的に流れてきた雲に包まれたのだろう」と大して気にもしなかったが、この雲が意外にしつこかったのである。

13時15分、ガスに包まれた黒岳山頂に到着。
平日にも関わらず結構な数の登山者が山頂で休んでいた。

山頂周辺には砂礫地が広がり、そこでは沢山の高山植物が花を咲かせていた。
登ってきた登山道沿いの植生とはがらりと変わるのが面白い。


エゾツツジ シマリス
黒岳山頂付近の花畑 エゾリスの姿も

黒岳山頂からの展望
ガスが晴れそうで晴れない黒岳山頂

ガスが晴れて展望が開けかけたかと思うと、直ぐにまた次のガスが流れてくる。
お湯を沸かしてホットドリンクを飲みながら晴れてくるのを待ったが、あまり期待できそうにない。

早めにテン場に行って良い場所を確保したいので、黒岳山頂からの展望は諦めて、黒岳石室に向かって降りていく。
石室手前には雪渓が残り、そこを過ぎるとチングルマが群落を作っていた。

混雑するテン場14時25分に黒岳石室のテン場に着いた時には、既に沢山のテントが張られていて驚いた。
中央部分は空いているけれど、地面が傾斜している。
かみさんが一人用テントなら張れそうな場所を見つけたが、私の二人用テントを張る場所がなかなか見つからない。

端の方のテントとテントの間にポッカリと空いたスペースがあったので、そこにテントを設営する。
隣のテントから若い女性が顔を出したので、「すいません、ここに張らしてもらいます」と挨拶をしたが、あからさまに嫌な顔をされた。
山を眺められる絶好の場所を確保したのに、直ぐ目の前に中年オヤジにテントを張られてしまった彼女の気持ちが分からなくも無い。
でも、それならばテントの前に余計なスペースを空けておくべきではなかったのだ。

私がテントを張り終える頃、彼女は張ってあったテントをズルズルと引っ張って移動していった。
余程嫌われたみたいだ。

テン場の朝雪渓がテン場の近くに残っていると分かっていれば、今日飲む分のビールも担いできたのだが、山小屋で売られている高いビールを買って飲むしかなかった。
明日からの縦走に備えて午後7時にはシュラフの中に潜り込んだ。

翌朝は3時半に目が覚める。
上空には雲が広がり、黒岳の山頂もその雲の中だった。
ただ、北の方に見える空は晴れていたので、多分山の上にだけ雲が広がっているのだろう。

テントの正面に見えている凌雲岳の山肌の一部を朝日が明るく照らし出していた。
そのまま一気に晴れてくることを期待していたが、5時45分にテン場を出発する時になっても、上空には鉛色の雲が広がったままだった。

赤石川を渡るまずは北海岳を経由して白雲岳の避難小屋を目指す。
途中の赤石川の徒渉が心配だったが、水量もそんなに増えていなくて、川の水に硫黄分が混ざっているので石の上に乗っても滑らないので助かる。
靴も殆ど濡らさずに渡ることができた。

北海沢沿いには大きな雪渓も残っていた。
雪渓が消えたところから順にエゾコザクラやチングルマが咲き始めている。

北海岳への登山道は5年前に歩いた時は雨水等による浸食で荒れていたが、今回は随分歩きやすく整備されていた。
尾根の上まで上がってくると、眼下にお鉢平が広がる。
しかし、その向こうに見えるはずの北鎮岳は雲に隠れたままだ。
それでも黒岳や烏帽子岳などは山頂まで見えていた。

そんな風景よりも登山道の周りに広がる花畑に目を惹かれてしまう。
イワブクロにエゾノツガザクラ、エゾツツジ、イワヒゲ、種類が多すぎて直ぐには花の名前が出てこない。


花に見惚れる エゾノツガザクラ
美しい花畑に足を止める エゾノツガザクラとチングルマ

北海岳山頂ではガスに包まれ何も見えず。
風も強いのでサッサと通り過ぎる。

キバナシオガマ白雲岳に向かって下っていくとキバナシオガマが群生していた。
今年はレブンシオガマやヨツバシオガマの赤紫の花を沢山見ていたので、その黄色い花がとても印象的だ。

その先では紫の花が地面を覆っていた。
礼文島で見たレブンソウと似ているが、ここで咲いているのはエゾオヤマノエンドウと言うらしい。

溶岩塊に覆われた荒々しい山肌の白雲岳が間近に迫ってくる。
その荒々しい風景を和らげるようにチングルマやキバナシャクナゲの花畑が広がっている。

白雲岳分岐まで登ってきた。
白雲岳には5年前に登っているので、今回は素通りする。
ミネズオウやイワウメがマットのように砂礫地の中に広がっている。

やがて眼下に白雲岳避難小屋が見えてきた。
そしてその先には、今回の縦走の最終目的地であるトムラウシ山も見えている。
雲の切れ間から日が射してきて、赤茶色の壁が印象的な白雲岳避難小屋を明るく照らす。
5年前にもこの風景に感動したが、何度見ても素晴らしい風景である。


エゾオヤマノエンドウ イワウメ
エゾオヤマノエンドウ マット状に広がるイワウメ

白雲岳避難小屋とトムラウシ山
目指すトムラウシ山が遠くに見える

水場に咲くエゾノリュウキンカ雪渓を下っていき、避難小屋の水場にもなっている沢を渡る。
そこではエゾノリュウキンカが花を咲かせていた。
4月5月の雪融け後に咲く花を7月に見ると、何となく不思議な気がしてくる。

避難小屋のベンチで一休みする。
テン場には3張りのテントが残っていた。
層雲峡から入ってトムラウシ温泉に下山するコースでは2泊3日で縦走するのが一般的である。
その場合、1泊目はここに泊まることが多いだろう。

私達は今回、そこを3泊4日で縦走するので、比較的余裕がある。
昨日のうちにここまで歩いてくるとしたら、私達にはちょっと厳しかったかもしれない。

高根ヶ原の縦走路眼下には高根ヶ原が広がり、その中に1本の縦走路が続いている。
5年前にこの風景を見た時には、是非その縦走路を歩いてみたいと思ったものだが、ようやくその思いが叶う時がやってきた。

少しずつだが青空も広がってきていた。
高根ヶ原まで降りてくると周辺はスレート状の平たい岩に覆われていた。
とても植物が育ちそうにもない環境に見えるが、そこが素晴らしい花畑になっていた。
エゾツツジの赤、タカネオミナエシの黄、エゾハハコヨモギの白に埋め尽くされている。

場所によってはそこにキバナシオガマやホソバウルップソウが混ざり込んでくる。
ホソバウルップソウの花がほとんど終わりかけていたのが、ちょっと残念だった。

コマクサも姿を現してきた。
それだけで群落を作ったり、ホソバウルップソウと絡んだり、場所によって花の組み合わせが違ってくるので、その度に歩みを止めてカメラを向けてしまう。
歩きやすい道なのに、さっぱり先へと進まない。


高根ヶ原の花畑
高根ヶ原、エゾツツジとエゾハハコヨモギの花畑

遠ざかる白雲岳後ろを振り返ると、いつの間にか白雲岳が遠くになっていた。
その代わりに旭岳が隣に見えてきていた。
こちら側から見ると随分いびつな形なのだなと思っていたが、しばらくしてからその後ろに端正な姿の旭岳が姿を現してきて、今まで見えていたのは後旭岳だったことを知ることとなった。

反対側に目をやると、そこは大きく切れ落ちて、その下には幾つかの沼が見えていた。
紅葉時期には沢山の人が訪れる人気の高原沼めぐりコースがあるが、今はまだ残雪も多そうで歩きづらそうだ。
そんな風景を見下ろしながら昼の休憩をとる。
熊の出没の多い場所なので、一生懸命その姿を探すが見つけられなかった。


眼下に高原沼
高原沼の熊の巣に熊の姿は確認できず

休憩を終えて再び歩き始める。
平ヶ岳への登りになると足元はぬかるみ、ハイマツの中で見通しも悪くなる。

そこを過ぎると再び展望が開けるが、登山道はゴロゴロとした石に覆われて歩きづらく、ダラダラとした上り坂が辛く感じる。
時々、コマクサの大群落が現れて、その辛さを吹き飛ばしてくれる。

忠別沼そこを登りきると眼下に忠別沼が見えていた。
そしてその先には、しばらく見えなくなっていた忠別岳の山頂が再び姿を現していた。
山頂とは言っても、なだらかな丘が突然切れ落ちている感じで、全体として山の印象はない。

周りをチングルマやエゾコザクラの花畑に囲まれた忠別沼はとても美しかった。
できればその水面に青空が映り込んでいれば、もっと美しかったはずである。
上空を覆っている雲は、なかなかスッキリとは晴れてくれないのだ。

エゾノハクサンイチゲとチングルマの白い花畑の風景を楽しみながら、13時35分に忠別岳山頂に到着。
西側が険しい崖となって切れ落ちたその山頂からは素晴らしい展望が広がっていた。
五色岳から繋がる稜線の向こうにはトムラウシ山が頭を出している。
旭岳の姿も美しい。
そして山頂周辺にも沢山の花が咲いていた。


忠別岳山頂
片側が大きく切れ落ちた忠別岳の山頂

忠別岳避難小屋へと降りていくそんな風景をたっぷりと楽しんだ後、今日の宿泊地である忠別岳避難小屋へ向かって降りていく。
下り初めて直ぐにその姿を確認できたけど、小屋への分岐地点が結構遠くて、途中で「通り過ぎてしまったのでは」と不安になるくらいだった。
そして15時に避難小屋に到着。

小屋には女性が一人だけだったが、私達はテン場の方にテントを張る。
小屋の方にはその後、外人のカップルと老夫婦がやって来たが、テン場の方は私達だけだった。

雪渓の直ぐ下から流れ出てくる水に缶ビールを漬けておくと、直ぐに冷えてくれる。
一息付いてからその冷えたビールで乾杯。
身体に染み渡るようで最高に美味しい。

忠別岳避難小屋のテン場ようやく青空も広がってきた。
昨日とは全然違う快適なキャンプである。

疲れていたので、今日も食事が終わるとまだ明るいうちからシュラフに潜り込んだ。

大雪山縦走3日目

大雪縦走1、2日目のアルバム 


1日目 7合目リフト降り場11:55 - 13:15黒岳山頂14:00 - 黒岳石室14:25  (1日目縦走記録グラフ
2日目 黒岳石室5:45 - 北海岳7:25 - 白雲岳分岐8:25 - 9:00白雲岳避難小屋9:15 - 10:25高根ヶ原分岐10:40 - 11:10昼食休憩11:35 - 12:50忠別沼13:00 - 13:35忠別岳14:00 - 避難小屋分岐14:50 - 忠別岳避難小屋15:05 (2日目縦走記録グラフ



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