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羊蹄山喜茂別コース(2018/03/03)

ここは何処の山?

最近3シーズン、一度は滑っている羊蹄山。
今回出かけたのは喜茂別コースである。

昨日までの2日間、二つの爆弾低気圧により大荒れとなった北海道だが、今日は天気も回復。
しかし、事前に調べた羊蹄山の天気では、標高900m付近で15m/s以上の西風が吹く予報になっていた。

果たしてこれで上まで登れるのかと心配していたが、I山さんはそれも考慮して山の東側になる喜茂別コースを選択していたらしい。
それでも、下界の風は穏やかだった。

午前7時半過ぎに喜茂別コースの登山口までやってきたが、既に数台の車が停まっていて、商業ツアーらしき一行が登る準備をしているところだった。
2年前にここを登った時は、自分たちで道路際を除雪して駐車スペースを確保したのだが、今回は歩道部分まで広く除雪されていたので、通行の邪魔になることなく車を停められた。

路上駐車が問題となってこの部分だけ除雪されるようになったのかもしれないが、私たちにとってはありがたいことである。

午前8時、一番最後に私たちのツアーが出発する。
上空には青空が広がっていたが、羊蹄山の姿は雲に隠れて全く見えない。


昨日までにこの辺りでは40センチくらいの降雪があったはずだ。
先頭の人は、その雪をラッセルしながら歩いているのだろう。
多分、体力のあるツアーガイドの人が先頭なのだろうから、私たちはそのトレースをありがたく使わせてもらう。

シラカバ林、トドマツ林、カラマツ林と姿を変える人工林の中の林道をひたすら真っすぐに進んでいく。
だらだらとした単調な登りが50分ほど続き、ようやく自然林らしい風景の中へと入っていく。
傾斜も徐々に増してきて、ここでようやくビンディングのクライミングサポートを1段階上げる。

今日の先頭は珍しくS藤さん。
何時もならば、後ろの方からマイペースでゆっくりと登ってくるのに、今日は北海道でのラストパウダーとなるので、張り切っているのだろうか。
一週間後には南国のリゾートで優雅な時間を過ごしているのだから、張り切るのも無理はない。

張り切っていても、そのペースはいつも通りにゆっくりだった。
今日はF本さんのように体力の有り余っているメンバーはいないので、そのペースは他のメンバーにも好評である。

ただ、そのS藤さんの後ろを登っていたかみさんだけは、直ぐ後ろから煽らないようにと一定の距離を保つのに苦労していたみたいだ。

次第に傾斜が急になってくる。
そこを登っているトレースも急である。
登り始めた頃、ツアー最後尾の人達が私たちに追い付かれるのを気にしている様子で時々後ろを振り返っていた。
脚力に自信が無いのかもしれない。
それを後ろから追いかけるように登るのも悪いので、私たちは敢えてゆっくりと登るようにする。

それが今は、先行しているツアーの影も形も見えず、その急なトレースに四苦八苦している状況である。
やっぱり、若い人たちのトレースを辿るのは無理があるようだ。

下から登っていると標高855m付近がちょっとしたピークのように見える。
実際はピークではなく、そこで少しだけ傾斜が緩くなっているだけだ。

登り始めてから約2時間、丁度良い区切りなので、そこで15分ほど休憩する。
ここまで登ってきても、相変わらず風はほとんど吹いていない。
I山さんの喜茂別コースの選択は間違いなかったようだ。

相変わらず前方には雲が広がているけれど、標高が上がると木の間から下界が見えるようになってきた。
雲の間から日も射してくる。
これは期待できそうだとテンションが上がるが、直ぐにまた太陽は隠れてしまう。


 

標高1000mを越えるとダケカンバの枝が樹氷に覆われてくる。
昨日までの吹雪で、ダケカンバの幹も雪で覆われているので、樹木全体が真っ白である。
青空も見えなく、白一色の世界である。
でも、これはこれで美しい光景だ。


相変わらず急な斜面と急なトレースが続く。
トレースの中でスキーがスリップし、キックターンで苦労していたかみさんは、とうとうトレースから外れて自分でラッセルしながら登り始めた。

ラッセルを全く苦にしないかみさんにとっては、その方が楽みたいだ。
私もそれに助けられる。
スキーがスリップすると、ストックで体を支えながら登らなければならず、体力の消耗が激しいのである。

森林限界を抜けたようで樹木もまばらになってきた。
標高はおよそ1180m、登り始めてから3時間15分。
遅れているK岡さんを待ちながら、どこから滑り降りるか検討する。

そこへ、先に登っていたツアーの一団が滑り降りてきた。
ガイドの人がカメラを構えて待ち受けるところへ、パウダーを派手に巻き上げながら次々に滑り降りてくる。
その最中にガスが出てきて、後の方から滑った人は霞んだ映像しか撮ってもらえなかったかもしれない。


K岡さんもまだ体力が残っていそうなので、もう一頑張り登ることにした。

しかし登り始めて直ぐに風が強くなり、ガスも濃くなってきた。
結局、更に60m登って標高1240mが今回の最高到達地点となる。

滑走準備をしている間も、強風が容赦無く吹き付けてくる。
僅か60mの差でこんなにも違うのか、それとも急に風が吹いてきたのか。
多分、前者の方なのだろう。
しかし、ガスの方は明らかに、今になって広がってきたようだ。

見通しが全くきかないので、これでは滑りようがない。
少しだけガスが薄くなった瞬間をついて、まずは下の方の樹木が見えているところまで滑り降りる。




雪は最高に良かった。
しかし、前の様子が見えないので、思いっきり飛ばすことができない。
離れ離れにならないように、他の人の姿が見える範囲で滑らなければならない。

見えているのは20~30m先までである。
先に滑って行った人たちのトラックも見当たらない。
滑り降りるルートは、登ってきたのとは違う斜面である。
快適なオープン斜面が広がっているはずだが、樹木が無いと完全なホワイトアウトとなる。
近くには深い谷もあるはずで、これでは怖くて滑ってられない。

谷の方から、商業ツアーの一行が登り返してきた。
せっかく登り返しても、このガスでは楽しく滑れるとは思えないが、1本だけでお客様を帰すわけにはいかないのだろう。

一休みしながらガスが少しでも薄くなるのを待っていたが、そんな様子は全くなかった。
こんな時は、本当にGPSが頼りになる。
自分のいる場所が地図上に表示されるので、どちらに向かって滑れば良いのかが分かるのだ。
紙の地図とコンパスがあっても、この状況は切り抜けられないかもしれない


諦めて少しずつ刻みながら滑り降りることにした。
その気になれば、標高差数百メートルを一気に滑れるのに、何とももどかしい。
おまけに雪質も良いとなると尚更である。

普段でもゆっくりと滑っているかみさんは、皆のようにはストレスは感じていないようだ。
それでもやっぱり、楽しめないのは皆と同じである。

標高が下がるにしたがってガスも薄くなってくる。
しかし、樹木が混んできて雪質も悪くなるので、快適さは半減する。
それでも、苦労することなく一気に滑れるのが嬉しい。

登ってきたルートとの間には小さな沢があり、林道でそこを超える。
ここで少しだけ歩かされるが、その先で登りのトレースと合流できる。
後は駐車場所まで、トレースの中を滑り台のように一気に滑り降りた。

道路の雪はぐちゃぐちゃに溶けていて、気温は完全にプラスまで上がっているようだ。
チラチラと舞っている雪が、雨に変わらなかったのが幸いである。

こうして羊蹄山ツアーは終わったけれど、一度も山の姿は確認できず、下界の様子もチラッとしか見えず、ほとんどが林間の登りと滑りで、オープンになっているところではホワイトアウト。
私たちは本当に羊蹄山を登ったのだろうか?
そんなことを考えてしまう山行だった。


 



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