北海道キャンプ場見聞録
漁岳(2018/02/28)
たまにはピークハント
以前から一度登ってみたいと考えていた漁岳。
それほど滑りを楽しめる山ではなさそうなので、久しぶりにピークハントだけを目的にして登ってみることにした。
ピークハントが目的ならば、天気が良いことが絶対条件である。
雲に覆われて何も見えないような時に山頂に立っても何の意味もない。
それが私たち夫婦の共通した思いなのである。
漁川に架かる橋の付近にある駐車スペースは災害復旧工事の車が沢山停まっていたので、漁岳林道入り口の除雪してある部分に車を停める。
ここには2台くらいしか停められないので、先客がいなくてラッキーだった。
上空には青空が広がり、絶好のピークハント日和。
と言いたいところだが、ここまで来る途中に見えていた漁岳山頂付近には雲がかかっていた。
実は、この日か前日に登るかで迷っていたのだけれど、直近の天気予報を参考にして今日に決めていたのである。
ところが昨日は、予報はパッとしなかったのに実際は一日中快晴の空が広がる最高の天気だった。
それと比べると今日は明らかに雲が多く、その雲も更に広がってきそうである。
午前7時55分に出発。
しばらく林道を歩いていく。
日が射して気持ちが良いけれど、この後に雲が広がってきそうなので素直には喜べない自分がいた。
初めて登る山だけれど、スノーシューのしっかりとしたトレースがあるので、ルートファインディングで苦労することはなさそうだ。
うっすらと雪が積もっているので、最近のトレースなのだろう。
心配していた通り、次第に雲が多くなってくる。
雲が広がってきてしまった
林道を1時間ほど歩き、標高720m付近から尾根にとりつく。
スノーシューのトレースは登る角度が急なので、途中から付いていけなくなる。
しょうがなく、自分でラッセルしながら登ることにした。
スノーボードで滑った跡が無いので、このトレースはスノーシューで上り下りしたパーティーのものなのだろう。
一人か二人分のスキーで滑った跡もあったが、スキーの登りのトレースは見当たらない。
この急なスノーシューのトレースを登ったのだとしたら尊敬してしまう。
急斜面を登り終え、再びスノーシューのトレースと合流する。
ここで1回目の休憩。
登り始めてから1時間20分。
前回の塩谷丸山のように2時間くらいで登れる山ならば、休憩しないで一気に登ってしまうけれど、漁岳のコースタイムは4時間半。
長丁場になりそうなので、こまめに休みながら登るつもりだった。
雪が舞い始めたので、途中で脱いでいたアウタージャケットを再び着込んで登り始める。
雲が広がってくるのは覚悟していたけれど、まさか雪まで降ってくるとは思っていなかった。
それでも、本格的な雪ではなく、時々青空も覗いて日も射してくる。
ダケカンバが大きく枝を広げ、トドマツが天に向かって伸び上がる。
美しい森である。
こんな森を見ていると、テントを張って一晩過ごしたくなってくる。
大きな雪の塊を見つけては、それにストックで目や口を書き込むかみさん。
四角い雪に書いた顔は食パンマンらしいが、ちょっと無理があるみたいだ。
尾根に上がってくると真っ白なオコタンペ湖の姿が見えた。
恵庭岳の姿もぼんやりと見えている。
昨日のような天気だったらもっと素晴らしい光景を目にできたのだろう、悔しくなってくる。
途中の950mピークと960mピークは右を巻くつもりでいたけれど、トレースは960mピークの方でまともにそこを登っていた。
しょうがないので私たちもピークの上まで登ったが、その先で一気に下っている様子を見てがっかりする。
次に、一際高い1175mピークが見えてきた。
うっかりすると、このピークを漁岳と勘違いしてしまいそうである。
1175mピークが見える
登り始めて2時間20分、標高差600m近くを登ってきて、さすがにスタミナが切れかけてきた。
丁度、日が射してきたので、1175mピークを目の前にして、大休止をとることにした。
ダケカンバの枝が樹氷に覆われて真っ白になっている。
その樹氷が太陽に照らされる様子は本当に美しい。
軽食をとって体力も回復し、再び登り始める。
1175mピークは左側を巻いていく。
この辺りまで登ってくると、トレースも所々で消えている。
GPSに登録してあったルートを参考にして進んでいく。
1175mピークを左から巻く
前を歩いていたかみさんが、突然向きを変えてピークに向かって登り始めた。
慌てて、「漁岳はまだ先だぞ」と声をかけた。
かみさんは1175mピークを漁岳だと勘違いしていたらしい。
そんなこともあって、ここでも少し登り過ぎてしまったようだ。
本当の漁岳山頂手前のコルに向かって滑り降りることとなる。
ようやく漁岳山頂の全貌が確認できるようになった。
しかし、ここにきて青空は完全に消えてなくなり、山頂付近も霞んでしまっている。
山頂が近づくにしたがって次第に傾斜も急になってくる。
斜面の上には雪庇も張り出していて、あまり良い気持ちはしない。
見通しが効かなければ途中撤退も考えたけど、周りの状況はまだ確認できる。
それに、雪が柔らかいのにも助けられた。
雪庇のできていない場所を見つけて、ようやく急な斜面を抜けだすことができた。
そうして11時20分、漁岳山頂に到着。
4時間は覚悟していたけれど、3時間半で登ることができた。
しかし、展望は殆ど無し。
かろうじて、オコタンペ湖と恵庭岳の裾野の方が見えているだけだ。
そこで待っていても青空は広がってきそうにないので、早々に滑り降りることにする。
苦労して登った急斜面は、僅か数ターンで降りてしまう。
そのまま沢に向かって滑り降りることもできるみたいだが、その先のルートが良く分からないので、素直に登ってきたルートを戻ることにする。
1175mピークは、何とか登り返すことなく、1150mの等高線に沿って巻くことができた。
その先で昼食休憩。
960mピークもスキーを履いたまま横歩きで登り返す。
青空が少しだけ広がってきて、オコタンペ湖や恵庭岳がぼんやりと姿を現した。
もっとはっきりと見えてくるのを期待してしばらく待っていたが、再び次の雲が広がってきてしまう。
林道までは、樹木を避けながらも大して苦労することなく滑ってこられた。
しかし、林道の方は途中で傾斜がなくなるところもあって、何か所かで歩かされる。
そうして12時50分、車まで戻ってきた。
山頂での曇り空は何だったのかと思えるくらいに、上空には気持ちの良い青空が広がっている。
漁岳のピークハントは一度で十分だと考えていたが、このままでは引き下がれない。
パウダーを期待しないのであれば、この山は春に登った方が気持ち良さそうだ。
何時の日かのリベンジを期して、札幌へ戻ることにした。