北海道キャンプ場見聞録
千尺高地(2018/02/17)
冬山で遊ぶ
千尺高地に登るのに朝7時半に道路情報館集合。
その予定が前日になって「朝のうちは風と降雪が強い」との理由で朝9時の集合に変更となる。
I山予報官の見立て通り、道路情報館に集まった時は雪がもさもさと降っていたのに、豊羽鉱山跡までやってくるとその雪も止んで青空も見えてきていた。
何時もより下の方に広い除雪スペースがあったので、そこに車を停めて午前10時に登り始める。
時間が遅かったので、既に他のパーティーが入っているだろうと思っていたが、この日は私達だけ。
さすがに今日の天気では、山行を中止にした人も多かったのかもしれない。
昨日もこの辺りでは雪が結構降っていたはずで、今日の雪と合わせて、かなりの積雪量である。
最初から膝ラッセルでスタートする。
今回の参加者は9名。
ラッセルを全く苦にしないF本さんは参加していないし、コージさん、テンコさんご夫婦にラッセルを期待するのは無理であり、ジュニアも頼りになりそうにない。
H池・M木ペアは未知数だけれど、K岡さんは論外。
必然的にI山さんと私たち夫婦でラッセルを担わなければならない。
でも、ラッセルは嫌いではないし、久しぶりに思いっきりラッセルできる。
そして、このラッセルの後にはご褒美としてノートラックの斜面が待っているのだ。
まずは、スキー場跡の斜面を登っていく。
今日は夏道コースを登って胡桃沢林道コースを下りてくる予定である。
帰りのことを考えると登りも胡桃沢林道を使った方が良いのじゃないかと提案したが、I山さんは「これだけ沢山雪が積もった後に山頂直下の急斜面を登るのは危険だ」との考え。
私もそれに納得して、夏道コースから登ることになったのである。
I山さんとかみさんのラッセルでスキー場跡を登り切ったところで、先頭を私に交代。
千尺高地の夏道コースを登る時は、無駄な登りをしないようにルートをとることが大切である。
ここのスキー場跡でも、途中から林の中をトラバースしなければならない。
夏道コースを登るのは久しぶりだったので、ルート取りに失敗して、途中から少し下ってしまった。
でも、帰りは胡桃沢林道を滑り降りるのだから、今日はそんなに厳密に上り下りに気を使う必要もない。
時々、木の枝に積もった雪が風に吹かれて一気に落ちてくる。
雪は柔らかいけれど、気温が高めで上着を脱いで登っているので、直撃されると堪らない。
雪が深いと小柄の女性ではラッセルも大変だろう。
そう思っていたが、かみさんは全く深雪を苦にしていなかったし、途中で先頭に立ったM木さんもなかなか戦力になっていた。
体重が軽い分、深く埋まらないのかもしれない。
ここを登る時の楽しみの一つに、後ろに見えてくる定山渓天狗岳の姿がある。
今日は雲が多かったけれど、青空が広がった一瞬、その天狗岳が姿を現し、皆から歓声が上がった。
目の前にやや急な斜面が現れたところで、テンコさんが先頭に立った。
「おおっ、テンコさん凄い!」と思ったが、100mも進まないうちに小さなくぼみに嵌って動けなくなり、敢え無く先頭をH池さんに交代。
クラブの中ではまだ若手と言える年代だけあって、H池さんも十分にラッセル要員としてカウントできることが分かった。
尾根へ上がる急登を前にして、最後の休憩をとる。
ここまで来るのに2時間半近く。
去年、クラブのツアーで登った時は2時間半で山頂に立っていたので、さすがに今日は時間がかかっている。
これから滑る斜面が見えていた。
丁度日が射してきて、その斜面を明るく照らす。
満を持して、カヌークラブ唯一の20代であるジュニアが先頭に立った。
その体重のために、他の人よりも深く沈み込むようだ。
普通の人は膝ラッセルで済んでいるのに、彼の場合は腿ラッセルとなる。
直ぐにへばるだろうと思って見ていたが、その状態で結構頑張ってくれた。
体力があるようには見えないけれど、これはやっぱり若さなのだろう。
皆で協力しながら、ようやく尾根の上まで上がってきた。
上空の強風にのって雲が次々と流されてきて、日が射したかと思ったらすぐにまた雲に包まれ、天気が目まぐるしく変わる。
ラッセルしながら登っているので、ペースはかなりゆっくりとしている。
しかし、そのペースでもK岡さんは遅れがちになる。
時々振り返っては、K岡さんが付いて来ているかどうか確かめなければならない。
普段でも登るのが速いかみさんだけれど、ラッセルの時も他の人より速い。
皆は呆れながらその後姿を見上げていた。
尾根の上は風当たりも強いので、普段は雪が飛ばされ、固い雪面となっていることが多い。
それが今日は最後までラッセルが続く。
そうして風に吹き晒される平らな山頂に到着。
時計を見てびっくりする。
登り始めてから4時間も経過していたのだ。
時折、目も開けていられないような強風に晒されるが、久しぶりに目にするスノーモンスターと記念撮影をする。
幌加内の坊主山でも雪に覆われたマツの姿があったけれど、元の姿が分からないくらいに雪の塊と化していなければスノーモンスターとは言えないのである。
雪庇の陰で風を除けながら滑走準備をする。
そこへ一番最後にやってきたK岡さんが、小さな雪庇を踏み抜いてもがいていた。
まずはノールになっている手前まで滑り降りて斜面の様子を確かめる。
その途中でかみさんが転倒。
雪が深いので、一度転ぶと簡単には起き上がれない。
テンコさんの助けを借りて、何とか立ち上がった。
木の陰ではかみさんが起き上がれずにもがいていた
まずはI山さんが滑り降りてビデオの準備をする。
雪煙に包まれて、直ぐにその姿が見えなくなった。
次に私が滑り降りる。
結構な急斜面だけれど、深くてしかもやや重たい雪質でスピードが全然でない。
これならば 直滑降でも降りてこられそうだ。
残りのメンバーも順々に滑ってくる。
それが途中で途切れて、後続がなかなか降りてこない。
どうしたのかと思ったら、ボードのK岡さんが転んで起き上がれず、それを助け起こすのに手間取っていたらしい。
深すぎる雪に苦労しながらも、皆楽しそうである。
しかし、楽しいのはここだけだった。
これだけの急斜面でもスピードが全然でないのに、この後は殆どが緩斜面である。
直滑降で滑るしかないと思っていたが、それは甘い考えだった。
人が滑った後ならば直滑降で滑れるけれど、先頭の人は途中で止まってしまうのである。
去年に胡桃沢林道を滑り降りた時は、他のツアーのトラックが残っていたので、それを追って軽快に滑ることができた。
それが今回は、何時も憧れている筈のノートラックの斜面である。
地形も複雑なので、去年のGPSトラックを頼りに、I山さんがルートの開拓をしてくれる。
ボードのK岡さんは途中で止まると動けなくなるので、ルート開拓が終わり、その後を何人かが滑ってコースが完成したところを滑り降りる。
転ぶと一人では起き上がれないので、K岡さんの後ろにも人を配置する。
そんな繰り返して、林道まで出てきた。
その林道は傾斜も殆どないので、先頭はオールラッセルである。
林道ラッセルに疲れ果て、登りのトレースに近づいたところで、そちらに合流することにする。
スキーを付けたまま80mほど斜面を登り、ようやく登りトレースに出た時は皆から歓声が上がった。
しかし、そのトレース、スキー場跡を登った後に私が付けたもので、少し下りのトレースになっていたのである。
そこをスキーを付けたままでは登ることができず、結局スキーを抱えてスキー場跡まで歩くこととなる。
その後はブッシュの多いスキー場跡、道路へ降りる斜面と、2か所でちょっとだけ深雪滑走を楽しみ、2時間半かけて車まで戻ってきた。
時間は既に午後4時半。
最近は日が長くなっていたから良いけれど、一歩間違えば暗くなってからの下山となるところだった。
ただひたすらラッセルを続けた山行だったけれど、バックカントリーで遊んでいるとたまにはこんなこともある。
体は疲れ切っていたけれど、冬山でたっぷりと遊んだ、そんな気分が皆を包んでいたようである。
ただ、前回の大黒山に続いて厳しい修行となったK岡さんが同じ気分だったかどうかは定かではない。