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股下山(2016/2/20)

拾い物の山行


2月19日は二十四節気の雨水。 
空から降るものが雪から雨に変わり、氷が溶けて水になる。
19日金曜日の札幌は正にその通りの天気で、最高気温が6度まで上がり雨も降っていた。
そして、土曜日も気温は高く、曇りのち雪の予報である。

これまでずーっとパウダーに恵まれ続けていた今年の山スキーも、ついに途切れる時がきたようである。
こんな週末は家に閉じこもるしかないと思っていたが、そんな時でもI山さんはしっかりと山スキーの企画を考えてくれる。
登るのは札幌国際スキー場近くの股下山だ。
金曜日の雨で木々に積もっていた雪も落ちてしまい、私の好きな白い森の風景は楽しめそうにない。
おまけに、雪も重たい湿り雪となって滑りも楽しめなさそうだ。
それでも、初めての山で、時間もかからずに登れるらしいので、I山さん企画に乗ることにした。

駐車場に集合そんな状況なのに、集まったのは9名。
先月に喜寿を迎えたばかりのK田さんご夫妻、久しぶりに参加のS村大先輩、そしてY須賀先輩にN島先輩。
50代のかみさんとI山さんが加わっても、平均年齢は70歳近いかもしれない。

その平均年齢を少しでも引き下げる役割をしてくれるのが、貴重な40代のsenちゃんだった。
札幌へ転勤してきて2年目。
I山さんから「せっかく北海道に着たのだから山スキーを楽しまなくちゃ」と半ば強引に誘われ、山スキーの道具一式をI山さんから借りての参加である。

駐車場所から車道を少し歩き、適当なところで道路際の雪山によじ登る。

道路から直ぐの斜面昨日の雨はこの辺りでは雪に変わっていたようである。
森の木々は真新しい真っ白な雪に枝先まで包まれていた。
おまけに、その雪は湿った雪ではなく、ふわふわの軽い雪なのである。

薄曇りの空からは日も射してきた。
全く予想外の展開に思わず笑みがこぼれる。

最初に少しだけ急な斜面を登ると、その先は暫くなだらかな傾斜が続いている。
シラカバの純林が美しい。
しかし、良く見るとその中にダケカンバも混ざっているようだ。
樹皮の剥けているのが多分ダケカンバで、幹の色もシラカバの白さとは少し違ってクリーム色っぽく見える。


シラカバ林の中を登る
シラカバ林の中を緩やかに登っていく

そのシラカバ林を過ぎると徐々に傾斜がきつくなってくる。
かみさんが途中で上着を脱いでいたけれど、私は何時もより重ね着を一枚減らしていたので、それ程暑くは感じない。
先頭でラッセルするI山さんも今日の参加メンバーに気を使ってゆっくりと登っているので、汗もかかないのだ。

雪の上で休憩中のS村さんそれでも、生まれて初めてスキーを履いて山を登るsenちゃんは、その後ろ姿が如何にも辛そうに見えていた。
そんなsenちゃんを救ったのがS村さんの「ちょっと休みませんか」の一声だった。

カヌークラブの中で、今でも現役で川を下っている中では最年長のS村さん。
その若さには恐れ入ってしまうけれど、さすがに74歳ともなると体力的な衰えはあるようだ。
休憩と同時に雪の上に倒れ込んでしまった。

休憩を終えて再び登り始める。
相変わらず苦しそうな表情で登っているsenちゃんの後ろから、K田さん奥さんがスタスタと付いていく。
その様子を見ていると、二人の間に親子ほどの年齢差があるとはとても思えない。

目の前に突然オープンバーンが現れた。
股下山で一箇所だけ滑りが楽しめる斜面があると聞いていたけれど、ここがその斜面らしい。
斜度も適度で、もちろんノートラックである。


親子の年の差の二人 オープンバーンに出てきた
前を登るsenちゃんとK田さん奥さん オープンバーンに出てきた。

股下山の斜面
美味しそうな斜面、向かいにはつげ山が見える

ここまでかかった時間は1時間10分程度。
股下山の山頂はまだ先だけれど、まずはここで一滑り楽しむことになった。
一滑りどころか、K田さん奥様は「さあ、5、6本滑りましょう!」と元気一杯である。

スプレーを巻き上げるY須賀さんビデオ撮影のためにI山さんが最初に滑り降りる。
次に私が写真撮影のために先に滑ろうとしたら、その前にK田さん奥様がノートラックの斜面に突っ込んでいった。
とても70代後半とは思えない。

Y須賀先輩がスプレーを巻き上げながらアグレッシブに滑る。
登りで苦労していたS村先輩も、優雅なターンを決める。
キロロの深雪に苦労していたN島先輩は、この程度の雪ならば転倒しながらも積極的に滑っている。

そんな大先輩達の後から滑り降りるsenちゃん。
登りでも苦労したけれど、下りでもやっぱり苦労していた。
ゲレンデでの経験はあってもバックカントリーは初体験。
いきなりこんな場所を滑れと言われても、上手く滑れる訳がない。


S村さんの滑り
S村先輩の優雅な滑り

senちゃんを後ろに従えて登り返すN島さん標高差にして60mほど降りたところから1本目の登り返し。
かみさんとK田さん奥様がサッサと登っていく。
登り返しに要した時間はおよそ10分。汗もかかない。

しかし、苦労して滑った斜面をまた歩いて登るという、普通の人には考えられないような苦行に、senちゃんは悲鳴を上げていた。
顔を歪めながらN島先輩の後を必死に追いかける。
senちゃんを後ろに従えて登るN島さんの姿には、風格さえ滲み出していたのである。

上まで登ってきたら直ぐにシールを剥がして2本目の滑り。
S村先輩は無理をしないでそのまま上で待っていると言う。
それにちゃっかりと便乗したsenちゃんは、またしてもS村さんに助けられることになったのだ。

ササッと滑ってササッと登り返す。
10分もかけずに登り返すと、さすがに汗をかいてしまう。
ノートラックの斜面はまだ沢山残っているので、このまま3本目を滑る覚悟はできていた。
しかし、ここで一旦山頂を目指して、ここは帰りに滑ろうという妥当な選択がなされホッとする。
いくら元気だと言っても、平均年齢は60代後半のパーティーなのである。

股下山山頂そこから山頂までは80mくらいの標高差である。
若干のアップダウンはあるものの、尾根伝いに登っていくだけだ。
天気が悪い時はこの斜面を滑っただけで引き返すことも多いらしい。

上手くルートを取らないと無駄な登り返しが多くなりそうな尾根歩きだ。
右手には雪崩の跡も生々しい急な斜面が見えている。
その先に朝里岳や国際スキー場の姿があるはずだ。

最後の急斜面を一登りして、標高820mの股下山山頂に到着。
滑りを楽しんだ場所からおよそ30分である。
山頂標識を探して辺りを見回していると、手の届かないような高さの樹木の枝先に標識がぶら下がっているのを見つけた。
今シーズン、標識が有るような山の山頂に立ったのはこれが初めてだった。


右手に見える急斜面 山頂へ続く尾根
急斜面には雪崩の跡も見える アップダウンを繰り返しながら尾根上を進む

尾根の上で後続を待つ尾根の上はアップダウンが多かったのでシールを付けたまま最初の斜面まで戻ろうと思っていたら、他の皆がシールを剥がし始めたので私もそうすることにした。
標高差が80mもあるし、雪庇の下を滑ることを厭わなければ、そんなに苦労しなくても滑ることができそうだ。

山頂を降りたところで皆が揃うのを待っていたが、senちゃんとI山さんがなかなかやって来ない。
どうしたのかと思ったら、senちゃんの履いていたブーツが壊れてしまったらしい。
元々はY須賀さんが履いていたもので、10年以上前の靴だという。
古くなったプラスチックブーツは突然壊れることがあるので恐ろしい。
山奥まで入っている時にブーツが壊れてしまっては大変である。

そこから先、壊れたブーツはI山さんが履いて滑り降りることになった。
結束バンドやベルト等で割れた部分を固定し、無理さえしなければ何とかなりそうだ。

これで今シーズンのツアーでは2回目の用具トラブルである。
修理用具を常に持ち歩くことの大切さを改めて思い知った。


途中で壊れたブーツを補強 壊れたプラスチックブーツ
壊れたブーツを補強する こんな風にプラスチックが割れてしまった

70代のお二人薄曇りだった空もすっかり晴れ渡り、日当たりの良いところの雪は既にかなり溶けてきていた。
これでは最初に滑った斜面の雪も状態は変わっていそうだ。

斜面の上まで戻って来たところで昼の休憩をとる。

そして最後の一滑り。
雪はまだパウダーのままだった。

同じように日が当たっていても、その角度によって雪の状態は全く違ってくるのだ。

スプレーを巻き上げたり豪快に転んだり、それぞれの滑りを楽しむ。


最後のパウダーを味わう
昼を過ぎても良い雪が残っていた

林間部も快適に滑れたオープンバーンを過ぎた先の林間も、樹木が混み合っているものの、結構快適に滑ることができる。
そのまま一気に道路まで戻ってこられた。

正直言って最初に股下山の企画を聞いた時は「白井岳に登った方が楽しそうなのに」と思っていた。
でも、それだとsenちゃんは死ぬ思いをしただろうし、老若男女、皆が楽しく山行を終えられて、今日はやっぱり股下山で正解だったのである。

天気も良くて雪も良くて、思わぬ拾い物をした感じの山行だった。

GPSトラック



道路取り付き8:05 - 楽しい斜面(9:15-10:30) − 山頂11:00 - 楽しい斜面12:15 - 道路12:35 



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