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キロロ992峰他(2016/1/30)

まさかの3本登り返し


今年の正月に中途半端で終わっていたキロロの992峰。
今回はそのリベンジである。

天気予報は曇り時々雪。
雪の降りしきる札幌を出発し、R393の毛無峠は路面が凍結し除雪車も出動中。
そのおかげで、のろのろ運転の車が行列を作っていた。
除雪車は途中で避けてくれたのに、もっと遅い車が前を走っているようで、車の流れは更に遅くなった。
その渋滞に巻き込まれていた今日のメンバーがほぼ同時にキロロ到着。

快晴のキロロスキー場センターハウスの中で入山手続きをし、一人だけ遅れていたmarioさんを待っている間に、外人パーティーが続々と手続きを済ませて、外に出て行く。
キロロの場合、中華系がゲレンデで、欧州系は殆んどがバックカントリーを目的にしている感じだ。

ようやく全員が揃ってセンターハウスを出ると、何時の間にか素晴らしい青空が広がっていた。
天気予報は物の見事に外れてくれたみたいだ。

前回、シールを貼ったままリフトに乗って、降りる時に転びかけていたので、今回は全員ファミリーリフトを降りてからシールを貼った。

ファミリー山頂ゲートを通ってバックカントリーに足を踏み入れる。
最近はこの「バックカントリー」の名前が、まるで悪者であるかのように、テレビニュース等で取り上げられている。

1107峰最初は抵抗を感じた今シーズンからのキロロにおけるバックカントリー規制も、安全のためには良い方法だと思えてきた。

1107峰の山頂が真っ青な空に縁取られ、森の上に浮かんで見えていた。
そのバックカントリーの森に足を踏み入れる。
昨日までのトレースの上に、5センチ程度の雪が降り積もっていた。

最初の難関は、前回私達を恐怖に陥れたスノーブリッジ。
あれから一月も経てばもっと安全なブリッジができているだろうと思っていたが、相変わらずそのブリッジ1本しか架かっていなかった。
それでもその幅が広がって、落下の恐怖を感じずに渡れるようになっていた。


余市川 スノーブリッジ
余市川はまだ水面が出ている スノーブリッジは幅が広がっていた

後ろにスキー場が見えてくる先頭で登るのは、今回一番張り切っているS藤さん。
最初から「今日は3本登り返すぜ〜っ!」とやる気満々である。

その後に続くmarioさん。
先を登る二人からやや遅れて、ゆっくりと登っていくのが今シーズン初参加のコージさんである。

S藤さんが時々振り返っては「無理しないでゆっくりで良いですよ〜」と68歳のコージさんを気遣う。
でも、前の二人だって今年還暦を迎えた人たちなので、それ程変わりは無いような気がするのである。

I山さんはコージさんに合わせて、その後をゆっくりと登り、かみさんがその後に続く。
今回はコージさんが一緒なので、I山さんは敢えて先頭に出ないようにしているらしい。
正しい選択だろう。
雪の風景何せ今回のメンバーの中では、I山さんとかみさんの二人のスピードは飛びぬけているのである。
と言うか、他のメンバーは全員が還暦を過ぎた人たちなので、お年寄りは労わらなければならないのだ。

私は一番後ろから、写真を撮りながら気ままに登っていく。
何時もならば、写真を撮っている間にどんどん置いて行かれるのだが、今日のペースだと直ぐに追い付くことができるのである。

ダケカンバの枝に積もっていた雪がひらひらと舞い落ちてくる。
真っ青な空に雪が舞う、何とも美しい光景である。


青空に雪が舞う
青空に雪が舞う

992峰の斜面行く手に目指す992峰の姿が見えてきた。
その斜面には既に何本ものシュプールが描かれているが、ノートラックの斜面もまだ沢山残っていそうだ。

外人パーティーが私達の前に何組も山に入って行った筈だが、992峰を目指しているのは私達だけだった。
992峰を含むベースエリアに入ったパーティーは皆、1107峰を目指しているようだ。

標高が高い分、1107峰の方が楽しく滑れる斜面が多いのは確かだが、手軽に登れて美味しい斜面もある992峰は、なんちゃって山スキーヤーの私達にはちょうど良いのである。

沢を詰める1107峰と992峰の間の沢は、まだ完全には埋まっていなかった。
私達は途中から989峰との間の細い沢を登っていく。
その沢を最後まで詰めて、そこから992峰の斜面に取り付けば、山頂はもう直ぐである。

太陽がちょうど山頂付近から私達に向かって鋭い光芒を放つ
木々の枝から一斉に舞い落ち始めた雪が、その光芒に照らされキラキラと光り輝く。

やがて目の前の風景は青と白に塗り分けられ、その風景に呼び寄せられるように登っていくと、天地の境界線の向こうにキロロのスキー場が浮かび上がってくる。
ゲートを出てから1時間40分で992峰山頂に到着である。


山頂への最後の登り 山頂まであと一息
キラキラと輝くダケカンバ 山頂への最後の上り

992峰山頂
992峰山頂到着、余市岳が1107峰の後ろに隠れている

992峰山頂からの眺め
足下にスキー場が見える感じだ

1107峰山頂に立っても風は全く吹いていなかった。
先週の羊蹄山に続いての素晴らしい天気。
今の季節、青空が広がったとしても、風が吹かない事はほとんど無い。
それが2週連続でこんな好条件に恵まれるのだから、ついているとしか言い様がない。

1107峰の姿が間近に迫り、山頂の人影まではっきりと見える。
札幌市の最高峰、標高1488mの余市岳も、その隣で小さくなっている。

眩しいくらいの陽射しに照らされた真っ白な斜面が眼下に広がる。
シールを剥すのももどかしく滑り始める。

斜面の上部には雪庇が発達しているが、できたばかりの雪庇ではないので崩れる恐れは少なそうだ。
それでも、雪庇の下には入らないように注意する。

雪庇を後ろにして滑るI山さんかみさんとコージさんは、急斜面にちょっとビビリ気味だ。
テレマークのコージさん。滑るのは久しぶりらしく、テレマークターンの際に左右どちらの足を前に出すかが分からなくなり、前方一回転。
ふわふわのパウダースノーのおかげで、一回転してそのまま起き上がったそうである。

I山さんが構えるビデオカメラに向かって滑り降りていく。
今日の雪質は、自分が突然スキー上級者に変わった様な気分にさせてくれる。

後傾姿勢気味でゆっくりと滑っているかみさんでも、豪快にスプレーを巻き上げる。

太陽の陽射しを目一杯浴びているはずなのに、雪質は十分なパウダーのままである。
それでもやっぱり、ターンの際に飛ばされた雪は小さな雪だまとなって斜面を一斉に転がり落ちる。

S藤さんは、まだ誰も滑ってない遠くの斜面まで行き、そこを豪快にかっ飛ばして一気に下まで滑り降りていった。


私の滑り かみさんの滑り
雪が良いと上手くなった気がする かみさんもスプレーを上げる

S藤さんの滑り
かっ飛ばすS藤さん

間違いなく、今シーズン一番の楽しい滑りだった。
989峰側の沢まで滑り降りて、当然のようにもう一度登り返す。

2度目の登り返し登っている途中、それまで青一色に染まっていた空に、白い影が漂い始めた。
幸運な天気はそんなに長続きはしてくれないのか。

登り始めてから40分で約200mを登り返し、2度目の山頂に立った。
心配していた天気も、まだ青空が広がっていた。

山頂には別のパーティーが登ってきていて、話しをしてみると、先週の羊蹄山喜茂別コースの標高1300mで出会ったグループだった事が分かりびっくり。
山に登っていると思いがけない出会いを時々経験するけれど、今回の出会いも相当な偶然だった。

そのまま無風の山頂で一休み。
2本目は989峰側の北斜面を滑り降りる。
そして今度はそこから989峰に登り返すことに。

989峰S藤さんが「いや〜、今日は本当に最高だね!コージさんどうします?3本目を登り返すかどうかはコージさん次第ですから。何かあったら困るので一人だけ先に降りるのは無しです。」
コージさんに選択肢は無いも同然だった。

S藤さんに促されて、かみさんが最初に滑ることになる。
「ノンストップで一気に下まで行っちゃって良いですから」

とは言っても、途中から斜度が変わり下の様子が全く分からない。
どうせ途中で止まるだろうと思って見ていたら、本当にノンストップでそのまま滑りおりていってしまう。
その後を追うように私も滑り始める。

素晴らしい雪質だった。
最初に滑った斜面もパウダーだったけれど、こちらは北向き斜面で陽が当たらず、本物のパウダースノーのままだったのである。
これでは途中で止まるのは勿体無さ過ぎる。
喚声を上げながら、私も一気に滑り降りた。


先頭で滑るかみさん 992峰北斜面
先頭で滑っていくかみさん 北斜面は最高の雪質だった

3本目登り返しそうして989峰への最後の登り返し。
途中からトレースが無くなったけれど、S藤さんがそのまま先頭でラッセルしていく。
今日のS藤さんは本当に最初から元気一杯だった。
来週から退職前の一ヶ月近いタイ旅行に出かけるので、最後の雪山を思う存分楽しみ尽くそうとしているのだろう。

途中からスノーシューのトレースがあったことに助けられ、最後の登り返しは標高差100mを20分で登ってしまった。
さすがにこの頃になると雲もかなり広がってきて、太陽の姿を隠してしまう。

今度は私が最初に滑り降りて皆の姿を撮影することにする。
これまでと同じ感覚で滑ろうとしたところ、重たい雪に板を取られそうになり、焦ってしまった。

989峰を滑るコージさんここの斜面は南東向きなので、さすがに午後になると気温は低くても雪は解けてくるのである。
それでも皆はまだ、派手なスプレーこそ舞い上がらないものの、普通に滑っていた。

途中からS藤さんが「この先に樹木が疎らな急斜面があるはずだ」と言って、トラバース気味に滑り降りていく。
それにつれて雪質も次第に腐ってきた。
トラバースしていくに従って、南東向きの斜面が南向きに変わってきていたのだ。
日差しが強いときは、斜面のちょっとした向きによって雪質がガラリと変わってしまうのである。


989峰からの眺め
989峰から滑降準備

かみさんの後ろで転んでる私ようやく辿り着いた疎林の急斜面。
これまで上級者の気分で滑れていたのに、一気に化けの皮が剥がれる。
まともにターンできず、急斜面にビビッて腰が引けてしまう。

おまけに悪雪に足を取られて転倒。
天気の良い時に989峰を滑る際は、なるべく午前中に滑った方が良さそうである。

最後の989峰は選択を誤ったけれど、まさかの3本登り返しでキロロのバックカントリーを満喫。
コージさんが「簡単に登れる山だと言うので参加したのに」とこぼしていた。
私達夫婦もさすがにこの日は帰ってから腰が痛かったので、コージさんも大変だったかもしれない。

もしもここにI上さんが参加していたとしたら「こんなに良い日はもう無いかもしれませんよ」と言って4本目の登り返しになっていただろうと、最後に皆の意見は一致したのである。

「来週は、体力が無い人でも参加できるような山に行きましょう」
めでたく来週の山行も決まったところで、解散となった。

GPSトラック) 


ファミリー山頂ゲート9:50 - 992峰11:25 − 992峰2回目12:50 - 989峰13:50 - センターハウス14:30 



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