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沙流岳(2015/4/12)

4月の樹氷


何時ものメンバーから「日曜日に沙流岳に登りましょう」と誘われ、土曜日は清水町の実家に泊まることにした。
先に様子を見ておこうと思って日勝峠経由で清水町に向かったが、雨と濃い霧で何も見えず。
快晴の日高山脈おまけに峠付近では、雨が雪に変わり吹雪模様の天候である。
土曜日はここまで天気が崩れるような予報ではなかったはずで、翌日曜日の晴れ時々曇りの予報も信じられなくなってきた。

そんな心配も、日曜の朝の晴れ渡った空を見て、一気に吹き飛んでしまう。
真っ青な空を背景にして、真っ白な稜線が鋭くエッジを描く日高山脈の姿。
そんな風景にワクワクしながら、日勝峠に向かって車を走らせる。

集合場所は日勝トンネル日高側入り口にある駐車場。
トンネルを抜けると、風景が一変した。
昨日の雪が樹氷となって、山の木々を真っ白に化粧していたのである。
日勝ピーク4月の中旬になって、しかも気温が高くなるとの予報が出ている中でこんな風景を見られるなんて思いもよらなかった。

今日の素晴らしい天気に誘われるように、駐車場には次々に車が入ってくる。
今回のメンバーは、私達の他にI山さん、マリオさん、十勝支部長のI上さんである。
その他に参加表明していたT津さんは、前日のニセコスキーで疲れたとかでドタキャン。

それを聞いてちょっと不安になった。
前回も似たようなメンバーで喜茂別岳に登り、私とT津さんの二人が先行するメンバーから大きく離されて、ヒーヒー言いながら必死になって付いていったのである。
そのT津さんが来ないとなると、私一人が置いていかれることになってしまうのである。

樹氷の横を登る午前8時40分、日勝ピークへと続く斜面を登り始める。
最近は、黄砂やPM2.5などの影響が大きくなってきていて、今時期の山の雪はかなり汚れて見える。
それが、昨日新たに数センチの雪が降り積もり、再び美しい雪山の風景が蘇っていた。

木々も真っ白な樹氷に包まれ、厳冬季の山の風景と変わりない。
違っているのは、強さを増した春の陽射しと暖かさである。
厳冬季の雪山の美しさと春スキーの快適さを両方味わえるのだから、今日は最高のスキー日和と言えそうだ。


美しい斜面を登る
日勝ピークへと続く斜面を登っていく

樹氷の中に入っていく一列になって登っていく皆から離れて、ダケカンバの疎林の中に入っていく。
ラッセルの苦労も殆ど無いので、自分の好きな場所を登ることができるのだ。
強い日差しに照らされて、ダケカンバの枝先まで覆っていた樹氷がパラパラと剥がれ落ちてくる。
まるで樹氷のシャワーを浴びているようだ。

標高1445mの日勝ピークには何度か登ったことがあるけれど、その先にある標高1421.8mの沙流岳に登るのは今回が始めてである。
日勝ピークから沙流岳に向かうには、一旦標高1250mまで下らなければならないこともあって、なかなか気が向かないのだ。

無駄な登りを避けるため、標高1200mを越える辺りから日勝ピークの北側を巻くように登っていく。
この北側斜面は、樹木が混んで傾斜も急なので、トラバースするのも楽ではない。
おまけに雪面も硬いのでスキーが横滑りしてしまう。
遅れないように皆の後を付いていくだけで精一杯である。


この辺りからトラバース 樹林帯の中をトラバース
この辺りから日勝ピークを巻いていく 樹林帯の中をトラバース

堀ゲレンデを登る森を抜けると、突然目の前にオープンバーンが広がった。
多分ここが堀ゲレンデと呼ばれている斜面なのだろう。
結構な急斜面なので、皆が登っているトレースに付いていけず、自分だけ角度を緩くして別ルートで登る。
最初に感じた不安が徐々に現実になってきたようだ。

その斜面の上で待っていてくれた皆にようやく追い付いた。
I山さんから「そろそろ休憩しますか?」と聞かれ、意地もあったので「いや、全然大丈夫ですよ」と答えてしまう。
登り始めてから、まだ1時間程度。
かみさんと二人の時は、休み無しで2時間登り続けることもあるので、決して空元気ではない。
ただ、そんな時は私が先頭になり、あくまでも私のペースで登っている時の話である。

背後に広がる展望先頭で登るのはI山さん。
手綱を解いてかみさんをフリーで登らせた時と同じペースで登り続けているのだ。
私の返事を聞いた途端、「それじゃあ行きましょう」とくるりと背中を向けて直ぐにまた登り始める。
「せめて水を一口飲みたかったな〜」と内心後悔しながら、その後を追った。

後ろを振り返ると労山熊見山や双珠別岳、そしてその向こうには十勝岳連峰の真っ白な姿が見えていた。
日勝ピークから沙流岳へと繋がる尾根の上に出ても、まだしばらく緩やかな登りが続く。
ダケカンバやアカエゾマツの間を縫うように登っていく。
細い尾根なので、左右に展望が開け、なかなか楽しい尾根歩きである。

標高1370mの小さなピークを越えると、その先はずーっと下りが続く。
ここに来てようやく、目指す沙流岳の真っ白な姿がはっきりと見えるようになる。
そこで初めての休憩をとった。


楽しい尾根歩き 沙流岳が見えた
楽しい尾根歩きだ 前方に沙流岳が姿を現した

沙流岳を眺めながら作戦会議I山さん、I上さん、マリオさんの3人は、そこから見える沙流岳と地形図を交互に見比べながら、沙流岳山頂からどのルートで滑り降りるかを話し合っていた。
日勝ピークを超えて尾根伝いに沙流岳まで登り、帰りも同じルートを辿るのが一般的である。
事前にネットで調べたところ、今回のように日勝ピークを巻いて登り、沙流岳山頂からは南東斜面を林道まで滑り降りて、そこから日勝ピークに登り返すルートを見つけた。
登り返す高低差は大きいけれど、そのルートのほうが沙流岳からの滑りをより長い距離楽しめそうである。
I山さんも、ネットで同じルートを見つけてGPSに登録していたのには笑ってしまった。
考えることは同じである。

無駄な登りを避けたつもりが、結局そこからまた100mほど下ることとなる。
下るのは楽だけれど、山スキーの場合、どうしても帰りのことを考えてしまうので、素直には喜べないのである。

山頂への最後の上り1250mのコルまで下りてきて、いよいよそこから山頂を目指しての急な登りが始まる。
途中で私達を追い抜いていったソロの男性は、早くも中腹辺りにさしかかっていた。
山頂付近は傾斜もきつそうで、スキーを履いたままで山頂まで登れるか、不安になってくる。

先行者のトレースは比較的緩い傾斜で登っていたが、I山さんはそれを無視して、直登するかのような急角度で登っていく。
私は最初からIさんを追うのは諦めて、自分の登りやすい角度で登ることにした。
かみさんは相変わらず、I山さんの後にピタリと付いて登っていたが、マリオさんは堪らずに脱落してそのルートから外れた。
次第に雪面は硬くなって、スキーが横滑りし始める。
その状態で一番急な斜面をトラバースする時はさすがに痺れた。
そこで転べば一気に100mは滑落しそうだ。
怖くてスキーのエッジを立てると、余計に横滑りしやすくなる。
体中に力が篭って、必要以上に疲れてしまう。

そこを何とか通り過ぎてホッとしたのも束の間、今度は頂上への急登が始まる。
スキーがスリップして、皆が登っていったトレースを辿ることができない。
やむを得ずルートを変えたが、今度は横滑りで前に進めない。
他のメンバーの姿は見えなくなり、既に山頂に達したようだ。
金具のヒールを固定して、横向きに一歩一歩登るしかなかった。それも、二歩登って一歩ずり落ちるといった風情である。

そんな悪戦苦闘をしながら、ようやく沙流岳山頂にたどり着いた。
時間は午前11時。コースタイム3時間10分のところを2時間20分で登ったことになる。
これでは疲れるのも無理は無い。


沙流岳山頂
沙流岳山頂

トマムスキー場山頂からは正に360度の展望が広がっていた。
気温が高い割には空気も澄んで、遠くの山々までハッキリと見渡せる。
十勝岳連峰や東大雪の山々、夕張岳や芦別岳、日高山脈の山は馴染みが無いので名前までは分からない。

ゆっくりとそんな風景を楽しみたいところだが、他のメンバーは滑ることしか頭に無いようだ。
山頂の東側には雪庇ができているが、一箇所だけ雪庇の切れているところがあり、そこから東斜面に降りられる。
当初の予定では南東斜面を滑ることにしていたが、下の林道は見えているものの、そこまで何処を滑り降りれば良いのかが分からない。
今回のメンバーは全員が沙流岳は初めてなので、頼りにできるのはGPSに登録してあるルートだけである。

しかし、山頂直下から広がるオープンバーン以外に、気持ち良く滑れそうな斜面は確認できない。
マリオさんは、南東斜面を下まで降りてしまうと日勝ピークに登り返すにはかなりの遠回りになるので、そのまま登ってきたルートを滑りたそうにしていた。
多分、ここまで登ってくるのにかなり体力を消耗してしまったのだろう。
沙流岳山頂からの斜面一方、I山さんとI上さんは少しでも沢山滑ることしか考えていない。
結局、南東斜面を途中まで滑り降りて様子を見ることにした。

山頂から少し南側に下って、雪庇が小さくなったところから斜面に下りる。
何時ものように、I上さんが真っ先に斜面に突っ込んでいく。
その後に続いて、皆が豪快に滑り降りる。
それを見届けてから最後に私が滑る。

最初の数ターンは気持ち良く曲がれたけれど、直ぐに雪が重くなって足を取られてしまう。
この雪では、このまま下まで滑っても意味が無いので、I山さんも登ってきたルートに戻ることに賛成した。


沙流岳を滑る 沙流岳を滑る
この辺りは気持ち良く滑れたが 重たい雪にスキーをとられる

ペケレベツ岳を眺めながら昼食ちょうどペケレベツ岳が真正面に見える眺めの良い場所だったので、そこで昼の休憩をとる。
春の日差しが心地良い。
しかし、ここから日勝ピークまで登り返すことを考えると、心の底から寛ぐことはできなかった。

昼食を終えて、尾根のコルまで滑り降りる。
そしてそこからは、日勝ピークに向けてひたすら登り続けることになる。
標高差は200m。遠くに見える日勝ピークの頂を見ると、登り返しと言うよりも、新たに別の山に登るように感じてしまう。

尾根をしばらく登ってから後ろを振り返ると、沙流岳の山肌に私達の描いたシュプールがくっきりと見えていた。
ソロで登ってきた男性二人のシュプールも、山頂直下の斜面に描かれていた。
それを見ると、素直に山頂から、登ってきたルートに向かって滑り降りたほうがもっと長い距離の滑降を楽しめたようである。


沙流岳に描いたシュプール
左のシュプールが私達の描いたもの

日勝ピークへの最後の登り日勝ピークへの登り返しは、完全な体力勝負となる。
こうなると、I山さんとかみさんの二人に付いていける人間はいない。
他の3人はヘロヘロになりながらその後を追うので精一杯だった。

コルからおよそ1時間で日勝ピーク山頂に到着。
何時の間にか上空には雲が広がり、風も強くなってきていた。
帰りには雨も降り始めてきたので、今回は本当に良いタイミングで天気に恵まれたようだ。

風を避けられる場所でシールを剥がし、いよいよ最後の滑降である。


日勝ピーク
日勝ピークから滑り降りる

この日勝ピーク斜面の北斜面は意外なほど良い雪質だった。
昨日から新たに降り積もった数センチの雪は、さすがにパウダーとは言えないけれど、まだ十分に新雪滑降の気分を味わうことができる。
気温は同じなのに、南斜面と北斜面でこれだけ雪質が違うとは驚きだった。

斜面には既に沢山のシュプールが刻まれていたけれど、そんなことも気にならず、各々が広々とした斜面を気持ち良く滑り降りる。
それでも、やや重めの雪は、私の技術では滑りこなすことが難しく、時々バランスを崩してしまう。
そのために、突然私の前を横切るように滑ってきたかみさんを避けることができずに、横から衝突してしまった。
幸いお互いに怪我はしなかったものの、これだけ広い斜面を私達パーティーだけの貸し切りで滑っていて、わざわざかみさんと衝突してしまうのだから情けない話しだ。

そんなアクシデントもあったけれど、皆で楽しく最後の滑走を楽しんで、駐車場まで降りてきた。
これならば最初からここを滑っていれば良かった。そうも思ったけれど、滑ることばかりが山スキーの楽しみではない。
最高の天気の下で初めての山に登ることができて、誰にも不満は無かった。

これで心置きなく今シーズンの山スキーを終えることができそうだ。
と思ったけれど、他のメンバーは雪があるうちはまだまだスキーを片付けるつもりはなさそうである。

今回のGPSトラック 
北斜面を滑った動画(衝突シーン付き) 


日勝ピーク北斜面を滑る 日勝ピーク北斜面を滑る
まずまずの雪質の北斜面 かみさんも優雅に滑っている


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