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オダッシュ山(2015/2/21)

シーズン最高の天気


高速道路から見る朝日カヌークラブ十勝支部長I上さんからの提案で、十勝のオダッシュ山に登ることになった。
私にとっては、子供の頃からその姿を何時も眺めていた思い出深い山で、そこに登るのは今回で3回目となる。
ただ、過去2回は私達夫婦単独で登っていて、天気にも恵まれず、いずれも頂上に立つことはできないままで終わっていた。

札幌を出る頃はまだ雲に覆われていた空も、走るに従って次第に晴れ間も広がり、道東道に入る頃には眩しいくらいの朝日が目の前に昇ってきた。
北海道は先週末に嵐に見舞われて以降、雪はほとんど降っていない。
気温もずーっと高いままで、山スキーを楽しむには、あまり嬉しい状況ではない。
それでも、十勝方面だけは木曜日まで曇りの天気が続き、気温もそれほど上がっていなかったので、少しはパウダーも期待できるかもしれない。

家を出てから2時間で十勝清水ICに着いてしまった。
新得町のコンビニに朝9時集合となっていたけれど、まだ1時間も余裕がある。
先に登山口の様子を見に行くと、そこまでの道路が除雪されているようなのでホッとした。
前回は、途中の畜産試験場までしか除雪されていなかったので、余計に40分歩かされる羽目になったのである。
綺麗な円錐形に見えるオダッシュ山事前に役場に問い合わせたところ、畜産試験場から先の道路は高速道路の管理の関係で除雪しているみたいなので、除雪されるかどうかはハッキリしないらしいのだ。

少し霞がかかっているものの、上空には素晴らしい青空が広がっていた。
これから登るオダッシュ山も、その青空を背景にして目の前に聳えていた。
私の実家のある清水町からこの山を眺めると、子供が描く富士山の絵のように、頂上が三つのピークに分かれているように見えるが、新得町からでは、角度によって綺麗な円錐形の山に見える。
一番奥にある本当の山頂が、前峰の後ろに隠れてしまっているのだ。

集合場所のコンビニには一番乗りで到着。
車の温度計はマイナス10度を示していたが、車の外に出てもそんなに寒くは感じない。
全くの無風なので、太陽の陽射しだけで体が暖められるのである。
やがてI山さんとその車に同乗したS藤さんが到着。その後直ぐに、浦幌十勝支部のI上さんもやって来た。

新得から見るオダッシュ山今日はこの他にY須賀さんとK田さんご夫婦が参加予定だったが、その3人は既にオダッシュ山の標高600m付近まで登っていると聞いてビックリした。
前日からキャンピングカーで泊まっていたらしく、登るのが遅いので先に登っているとのこと。
それにしても、標高1097.5mのオダッシュ山の600mまで達していたら、私達がどんなに急いでも追い付くことはできそうにない。
まあ、こんなに晴れ上がった今日の空を見れば、さっさと登りたくなるのは無理も無い話しだ。

私達も直ぐに登山口に向かう。
そこは、少しだけ幅広く除雪されているが、Y須賀さんのキャンピングカーの他に帯広ナンバーの車が1台停まっていて、既に満車である。
私のXトレイルは強引に雪の中に突っ込んで停めれたけれど、I山さんとI上さんの車は300mくらい離れた場所に停めるしかなかった。
それでも、道路が除雪されていなくて2キロ手前から歩くことを考えれば、これでも御の字である。

9時20分に登り始める。
植林されたトドマツ林の中の林道を歩いていく。先行者のトレースは、深さ10センチも無いくらいで、最近は新たな雪も殆ど積もっていないようだ。

500mほどで高速道路にぶつかり、その下に作られたトンネルを潜って反対側へと出る。
風で吹き込んだ雪がトンネルの幅半分くらいに積もっていて、スキーを履いたまま通り抜けられるのはありがたかった。


トドマツ林の中の林道 高速道路下のトンエル
颯爽と滑り降りてくるS藤さん 992峰の北斜面

トドマツ林の中を登る高速道路から先も、しばらくは緩やかな登りが続く。
そして、規則正しく植えられた、まだ若いトドマツの林の中に入っていくと、次第に傾斜がきつくなってくる。
陽が遮られ薄暗く感じるトドマツ林を抜けると、その先はダケカンバの疎林となり、急に回りが明るくなる。
傾斜は更にきつくなり、先行者のトレースはその斜面をジグザグに登っていく。

先行する3人は、K田さんご主人の75歳を筆頭に、平均年齢は70歳前後のはずである。
もっと緩やかな角度で登っているのかと思ったら、全然違っていた。
S藤さんが、「これ本当にY須賀さんなのか?」とぶつぶつ文句を言うくらいに、目一杯の斜度で登っているのである。

後ろを振り返ると新得の街並みが見渡せた。
そしてその先には、ニペソツ山やウペペサンケ山などの東大雪の山々が白く連なって見えている。
少し霞がかかっているのが、ちょっと残念だ。


開けた斜面に出てきた
開けた斜面に出ると背後に新得の街並みが見えるようになってきた

トレースに従って登っていく他のメンバーはオダッシュ山に登るのが初めてなので、今日は自分が登るルートを考えなければならないと覚悟していたが、先行者のトレースのおかげで余計なことに気を使わなくて済む。
目の前に広がっている開けた斜面をそのまま登っていけば、山頂へと続く尾根に出ることができる。

しかし、その付近の尾根には雪庇ができていることが多いので、それを避けるためにはもう少し標高の高いところで尾根に上がらなければならない。
その場合、途中で背の低いエゾマツの密生した場所を通り抜けなければならず、前回もここで苦労していた。

何処かに良いルートが無いだろうかと考えていたが、先行者のトレースもやっぱり、その藪のようなマツ林の中に続いていた。
マツの枝を掻き分けるようにしてそこを突破すると、次に待ち構えていたのはダケカンバの幼木の林。
こちらは枝は邪魔にはならないけれど、幹と幹の間隔が狭くて、その間をすり抜けながら登らなければならない。

稜線までもう少しそれも突破するとようやく稜線が目の前に見えてきた。
雪庇の無い場所から尾根の上に出て、そこで小休止。
ここまで1時間20分かかっていた。
そこからは、前峰の頂までをほぼ見渡せるが、そこに3人の姿は見当たらない。
I山さんがY須賀さんに電話すると、頂上までもう少しの場所まで登っているとの事である。
私達も直ぐにその後を追うことにした。

尾根の上は、吹き溜まりでデコボコしていて、おまけに雪面も硬く締まって登りづらい。
しかし、後ろを振り返ったときに広がるパノラマは、登るにつれてますます雄大になってくるので、それが励みとなる。
霞みも薄れてきたようで、遠くの山の姿もくっきりと見えるている。


尾根からの風景
登るに従って素晴らしい展望が広がる

前峰へ続く尾根の斜面前峰のピークが近づくと更に傾斜はきつくなってくる。
前回はそれ以上スキーで登ることができず、ここでスキーをデポして、その先はつぼ足で登っていた。
今回は柔らかい雪が少し積もっていたので、何とかスキーで登ることができる。
その積もっている雪だけれど、雪というより氷の欠片である。
回りの木々に付いた樹氷が、気温が上がって剥がれ落ち、それが何日分か積もったものだと思われる。
上を向くと、木々の枝にはまだ白い樹氷が残っていた。
早い時間に登っていれば、もっと美しい樹氷を見られたかも知れない。


樹氷の残る枝 前峰ピーク
樹氷が残るダケカンバの枝 前峰ピークの岩

山頂への最後の登り大きな岩のある前峰ピークまで2時間10分かかって登ってきた。
岩の横を通り過ぎ、細い尾根の上を歩いていくとダケカンバの枝越しに真っ白なピークが見えてきた。
それが、オダッシュ山の山頂である。先に登頂した3人が手を振っているのが見える。

最後の急斜面を登りきって、11時45分山頂到着。
Y須賀さん達は11時頃には付いていたらしい。
普通ならば、真冬のこの時期、山頂に長い時間は留まっていられない。
それが今日は、山頂まで登ってきても相変わらず無風に近く、しかも心地良い陽射しに包まれ、寒さは全く感じないのだ。

回りには素晴らしい風景が広がっていた。
尾根の上からずーっと眺めていた東大雪の山々に加えて、トムラウシ山や十勝岳連峰も一続きで見渡せる。
私は気付かなかったけれど、十勝平野の遥か奥の方には雌阿寒岳や雄阿寒岳の姿も見えていたらしい。
狩勝峠から佐幌岳まで続く山並みも美しく、その上に浮かぶように見えている十勝岳連峰の姿が印象的だ。
山頂は大賑わい日高山脈の中では、狩振岳の端正な姿が目立っていた。
そのほかの山は、地形図でも広げなければ同定は難しそうだ。

地元の登山者の方は男性二人連れだった。
これまでに何度かオダッシュ山に登っているけれど、人に会ったのは今回が初めてらしい。
それが、既に山頂に3人も居たので驚いていたら、その後からぞろぞろと何人も登ってきたので、本当にビックリしたとのこと。
私達も、ニセコや羊蹄山、周辺の山々が外国人だらけなことに驚いていて、彼らにその話をしたら、もっと驚いていた。
静かな山を楽しみたいのならば、こんな遠くにまで足を延ばさなければならいのである。
もっとも、地元の方からは、最近は札幌の方からも山スキーヤーがやって来るようになったと迷惑に思われているのかもしれない。


十勝岳連峰も見える
十勝岳連峰が格好良い

狩振岳など アルカイダ風のかみさん
狩振岳と双珠別岳 強烈に日射しにかみさんもアルカイダ風に

下山は、前峰の東側に広がるオープンバーンを滑る予定だった。
しかし、オダッシュ山山頂直下の北斜面に魅せられてしまったI上さんが、そこを下りようと言い始めた。
北斜面を滑る札幌から十勝の浦幌に転勤になったばかりのI上さんは、山に出かける機会も減ってしまい、パウダーに飢えた狼状態なのである。
地元の方の話では、これまで北斜面を降りた人は見たことがないと言う。
Y須賀さん達は、素直に登ってきた場所をそのまま滑り降りていった。
I上さん、I山さん、S藤さんの3人は本気で北斜面を滑るつもりらしい。
しょうがないので私も付き合おうと思ったが、下も見えないような急斜面にかみさんがビビッてしまったので、北斜面はパスすることにした。

バックカントリーの用語でドロップポイントの言葉を良く耳にするようになったが、北斜面への滑り出しはドロップの言葉がまさにぴったりである。
3人が順番にドロップインして、直ぐにその姿が見えなくなるのを見送ってから、私達は登ってきたルートに従って滑り降りる。


北斜面にドロップインしようとする3人
北斜面はかなりの斜度、ここからドロップインしようとする3人

山頂からの斜面は直ぐに終わってしまい、そこから前峰までは緩やかな起伏があるので、シールを剥がさずに下りた方が良かったかもしれない。
前峰を過ぎた先の尾根斜面で、Y須賀さん達がシールを剥がしているところに追い付いた。
そして、吹き溜まりでデコボコした尾根斜面を苦労しながら滑り降りる。

尾根の上で合流北斜面に下りていったI上さん達がここまで登り返してくるまで、暫く待っていなければならないだろう。
そう思っていると、森の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。何時も陽気で賑やかなS藤さんの話し声である。

登ってくる時に、東斜面のオープンバーンへ出れそうな場所に目星を付けていたのだが、間もなくしてそこから少し下がったところに3人が姿を現した。
美味しそうなパウダー斜面に目がくらみ、後先も考えずに滑り降りていったように見えたI上さんだったが、登り返さずに途中の尾根に出れるよう、冷静に計算しながら滑っていたようである。

Googleマップの航空写真を見て、東斜面のオープンバーンへ出られそうな場所に目星を付けていたので、その付近から尾根を降りる。
林間をトラバース気味に滑っていくと、疎林の良い斜面が現れた。
雪も軽く、斜度もちょうど良い。
喜び勇んで滑り降りる。

スプレーを上げて滑るS藤さん疎林を抜けると、見事なオープンバーンが広がっていた。
疎林部を滑っているつもりでそのオープンバーンに突っ込んでいくと、表面が軽くクラストしているので、スキーが引っかかる。
それでも大回りのターンで滑れば、それも殆ど気にならない。
下の方でI山さんがカメラを構えているのが見えたので、そちらに向かって滑り降りる。
調子に乗ってスプレーを上げようとしながら滑っていると、バランスを崩してひっくり返ってしまった。

オープンバーンは、まだ続いていたけれど、沢の下まで降りてしまうと戻るのに苦労するらしいので、そこからはひたすらトラバースしながら滑っていく。
ダケカンバやエゾマツの密林には入らずに、登りのトレースがあるところまで戻ってきた。
これならば、登る時のルートもこちらを選んだ方が良いかもしれない。


オダッシュ山のオープンバーンを滑る
オープンバーンを颯爽と滑る飢えた狼I上さん

私の滑り 転倒
カメラを意識しながら滑っていると こんな事に

日当たりの良い場所では、雪も少し解けてきていた。
その重たい雪にスキーを取られ、再び頭から雪の中に突っ込んでしまった。
軽い雪ならばそれなりに滑れるようになってきたけれど、少しでも悪雪になると対応できないのは、技術がまだまだ未熟なのだろう。

オダッシュ山のオープンバーンそこで一休みしながら、皆でオダッシュ山の素晴らしさを語り合う。
自分の実家の隣町だけれど、故郷の山を褒められるのは、悪い気がしない。
その気になって開拓すれば、周辺には山スキーで楽しめそうな山がまだまだ沢山ありそうだ。
雪の少ない十勝だけれど、気温が低いのでパウダースノーを楽しめる機会は意外と多いかもしれない。

その後は、車を停めてある場所まで一気に滑り降りる。
高速道路のトンネル通過が唯一の難所となるくらいで、その他の区間は、ほど良く締まった雪の上をまるでスキー場の初心者向け林間コースを滑るようにして降りることができる。
今シーズン初めてと言っても良いくらいの、素晴らしい天気の下で山スキーを存分に楽しむことができたオダッシュ山であった。

オダッシュ山滑降の動画 


駐車場所 尾根 前峰 山頂
1:20 0:50 0:15
下り 1:00(休憩含む)
距離:3.7km 標高差:714m


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