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音江山(2014/01/23)

恵まれた一日


確実に天気が良くなりそうな日に休みを取って何処かの山へ出かけよう!
そう考えて、週の初めの月曜日には、金曜日までの天気予報とその週の仕事のスケジュールを互いに見比べて、考えを巡らせるのが最近の月曜日の日課となっている。
しかし、天気が良くなりそうな日とスケジュールの空いている日がピタリと合うことなど、そう何度もあるものではない。
また、ちょうど良い日があって計画を立てたとしても、前日になって天気予報ががらりと変わってしまうことは、良くある話なのだ。

名付けて「天気が良い日に休んで山へ作戦」。
その作戦決行日を、迷った末に木曜日と決めたのだが、例によって週間天気予報は節操も無くコロコロと変わる。
「金曜日の方が良いかな〜、でも、3連休にしちゃうと、次の休みが取りづらくなるしな〜」などと、この作戦の微妙な困難さに頭を悩ませる。
そして、水曜日午前11時札幌管区気象台発表の天気予報で、作戦決行に申し分なない条件が揃ったことを確認し、「ニイタカヤマノボレ」心晴れやかに休暇願を出したのである。
登る山は、「ニイタカヤマ」ではなくて「オトエヤマ(音江山)」だった。

前日の夜から雪が降り始め、木曜日の朝は4時半に起きて、家の前の雪かきから始めなければならなかった。
おまけに、札幌市内を抜ける高速道路は雪のために通行止めとなり、道路が渋滞するのは必至である。
晴天の空の下、高速道路で北を目指すしょうがないので、朝7時に自宅を出、札幌市街地を避けて、当別バイパス、美原バイパス経由で、江別東ICで高速道路に入るルートで深川を目指すことにした。
これらのバイパスを利用するのは初めてだったが、結構走りやすくて、家の近くの新川ICから高速に乗るのに比べても30分程度余計に時間がかかった程度で済んだのである。

自宅を出て間もなく、空は見事に晴れ渡り、後は深川まで素晴らしい青空の下を車を走らせる。
そうして、9時半前に音江山への登り口に到着。
ちょうどその付近の道路除雪も終わったところで、これで安心して車も停めておける。
この辺りでは新たに10センチくらいの雪が積もったようである。
平日なので、今日は山頂までラッセルしながら登ることになるかも知れない。
そんな覚悟をしていたけれど、除雪でできた雪山を越えると、その先の林道にははっきりとしたトレースが残っていた。
その上に昨日からの新雪が10センチ程積もっているが、サラサラの粉雪でなので、歩くのには全く支障にならない。
これは大助かりである。


出発 トレースがあった!
駐車場所から出発 このトレースに助けられる

林道歩きが続く天気は良いけれど、気温はかなり低い。
深川のこの日の最低気温は−23度、最高気温も−10度くらいまでしか上がらない予報になっていた。
それでも陽射しがあるので、体が直ぐに汗ばんできて上着を1枚脱がなければならないほどである。
林道を30分ほど歩き、川に架かる橋を渡って、そこからが本当の登山道となる。

2年前に来た時は、川の対岸に沖里河温泉の潰れかけた建物が見えていたのに、そこは更地になってしまっていた。
タヌキが住み着く、良い感じの廃屋だったのに、ちょっと残念である。

雪を被った森の中を歩き、山の斜面を一気に登って尾根の上へと出る。
音江山に登る時、ここから先が一番気を使う部分である。
北海道雪山ガイドによると、標高を変えない様に斜面をトラバースして最後に沢を渡ることになっているが、変なルートでトラバースすると、下山時に登り返しになって苦労することになるのだ。

斜面をトラバース我が家が音江山に登るのはこれが3度目。
3年前に初めて登った時は、最後の渡渉地点まで上手く行くことができた。
しかし、2年前にカヌークラブの仲間と来た時には、その経験を元に先導役を買って出たところ、このトラバース中に道を間違え、全く違う方向へと登ってしまったのである。

そんなことがあったものだから、今回は3年前の歩いたルートをGPSに登録し、途中でそれを何度もチェックしながら進んでいく。
普通はこんなところでは目印のリボンが木の枝に付けられているものなのだが、そんなものは何処にも見当たらない。
私達が辿っているトレースの他に、上の方にも下の方にも、別々のトレースが付けられていたりもするのだ。

そして、下の方のトレースは、途中で強引に沢を渡っていた。
沢さえ渡れば、後は目の前の斜面を登って、頂上に通じる尾根の上に出れば良いだけである。
しかし、そこで渡ってしまうと下山時には沢から結構登り返すことになってしまう。。
もっと先まで進めば楽に沢を渡れるはず、そう考えて私達は先に進んだ。

トドマツの森をトラバースその先で沢地形が二股に分かれているところがあった。
2年前にルートを間違えた時は、多分この辺りで違う方の沢に沿って進んでいったのだろう。
今回もここで、どちらに向かって進めば良いのか分からなくなったが、正しい方に進んでいるトレースが有って、それに助けられた。

2年前の時も、同じGPSの軌跡を頼りに登っていたはずなのに、実際の距離とGPS上の標示の縮尺をしっかりと把握していないと、ちょっとした違いで大きくルートを外れることになるのだ。

今回は何とか、適当と思われる場所で沢を渡ることができた。
しかし、その先で登りのトレースを見失ってしまった。
それらしいトレースは所々にあるものの、それらは全て、滑り降りた時のトレースの様である。
しょうがないので自分たちでラッセルしながら登ろうとしたが、雪が深いので、そう簡単に前には進めない。
尾根へ向かって登る手前の方で沢を渡った人達のトレースが何処かに残っているはずだと思い、山頂からは遠ざかる方向になるけれど、それを探しながら登ることにした。
そして間もなく、そのトレースに合流することができて安堵した。

今回は平日ということもあり、ラッセル覚悟でやって来のだが、もしもスタートからずーっとラッセルすることになっていたとしたら、頂上まではたどり着けずに終わっていたことだろう。
二人だけで行動するのは気軽で良いけれど、こんな時には困ってしまうのである。

高度を上げていくと、木々の向うに石狩平野の展望が開けてきた。
そうして、ようやく尾根の上まで登ってきて、ここでようやく休憩を取る。
登り始めてから2時間10分経過していた。
枝の上に雪をたっぷりと乗せたトドマツの姿が青空に映えて美しい。


下界の風景が見える トドマツの出迎え
木々の間から下界の風景が見えてきた 尾根の上ではトドマツが迎えてくれた

ダケカンバ林その先のダケカンバの林は、まだ林齢も若く、空に向かってすらりと伸びた木々の姿が美しい。
その林を太陽の光が照らし、何とも清々しい森の雰囲気を演出している。

その先でまた風景が一変した。
こちらはダケカンバの老木の森。
一本一本のダケカンバを雪が分厚く覆い、白いモンスターの森と化していた。
真っ青な空を背景に広がる、白一色の世界。
その中に入り込み、私もかみさんもため息とも喚声ともつかない声を上げる。

標高800mにも満たない音江山なのに、その風景はまるで高山の様だった。
そこから見える周辺の山々も、山頂近くの木々は全て樹氷に覆われている。


真っ白なダケカンバの森
真っ白なダケカンバの森に感動

青と白のコントラスト 隣の山も真っ白
青と白のコントラストが美しい 隣の山も真っ白だ

石狩平野を一望尾根の反対側へと出ると、そこには違う展望が広がっていた。
深川から滝川へと続く石狩平野、その中央を蛇行しながら流れる石狩川、そしてその奥に控える樺戸山地や増毛山地の山並み。
樹木が1本も生えていない真っ白な斜面の向うにそんな風景が広がっているのだ。

青い空をバックに真っ白な樹氷の間を抜け、深川の町を瀬にして、音江山山頂を目指す。

そうして、12時30分山頂に到着。
かかった時間は2時間50分だった。
なだらかな丘のような山頂だが、背の低い樹木が僅かに生えている程度なので、そこからは正に360度の展望が開けている。


青空を背景に登る 深川の町を背にして登る
青空を背景に登っていく 山頂への最後の登り、深川の町が後ろに見える

地形図を見ると、音江山を含め隣のイルムケップ山と沖里河山と合わせて一つの山塊を形づくっていて、それが島の様に北海道の中央部に浮かんでいるのが分かる。
音江山山頂北から東にかけては石狩川が作り出した石狩平野が広がり、その先に増毛山地が続く。
南側には空知川が流れ、川に沿って赤平や芦別の炭鉱の街があり、そしてその先は夕張山地となる。
西側にはイルムケップ山や深川スキー場のある沖里河山が間近に見え、その山越しに旭岳からトムラウシ山、十勝岳などの大雪山・十勝岳連峰までが遠望できる。

以上のことは、地図を見ながらこの文章を書いているから正しく表現できるのであって、山頂に立っていた時は「あそこに見えるのは何山だ?あっちにも高そうな山があるぞ!あの街はどこになるんだろう?」などと、北も南も分からないままに、かみさんと二人で大騒ぎしていたのである。


音江山山頂からの展望
音江山山塊の向こうには大雪の山並みも見えている

音江山山頂からの展望
石狩平野と石狩川、そして増毛山地

山頂で昼食風も無く、そんな360度の風景を楽しみながら、山頂で熱々のカップラーメンを食べる。

この日の深川の12時の気温は、後で調べてみると−14.8度だった。
多分、盆地のような地形が影響して下界の方が気温が低くなっていたので、その時の山頂の気温は−10度くらいだったと思う。
風が無いので、太陽の陽射しを全身に浴びていると、寒さは全く感じない。

あまりの条件の素晴らしさに山頂を立ち去り難かったが、遠くに見える山々にも次第に雲がかかり始めてきたので、それを潮時に下山開始。
まずは東側に広がる真っ白な斜面に軽くいたずら書きをする。

真っ白な斜面にシュプールを3年前はそのまま登ってきたルートに沿うように滑り降りたのだが、音江山は山頂から東側の沢に向かって滑り降りるのが楽しいらしい。
そこで途中から東側に滑り降りてみた。
これが噂に違わず楽しい斜面だった。
3年前もそれなりに滑りを楽しんでいたが、こちらの方が樹木も疎らで、大斜面を一気に滑り降りる感覚を味わえる。

始めて滑る場所なのでどちらに向かって下りて行けば良いのか分からない。
ただ、周辺にはシュプールの跡が薄く残っているので、気にしないで一気に滑り降りる。
途中で下りすぎたのに気が付いて、少し登り返したけれど、沢に下りてくるまで最後まで滑りを楽しむことができた。
その後は沢沿いに滑って、無事に登りのトレースに合流する。

天気も良くて、景色も良くて、滑りも良くて、3拍子揃った今回の音江山は最高に楽しく、作戦は大成功裏に終わったのである。

 滑走風景の動画 山頂からの360度パノラマ動画


音江山を滑る 音江山を滑る
東斜面を滑る 気持ちの良い滑りを楽しめた

駐車場所 沢の渡渉ポイント 山頂

1:30

1:15
距離:4.0km 標高差:617m


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