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奥手稲山(2011/12/19)

時間切れで引き返す


 岩見沢では記録的な大雪になっていると言うのに、札幌市の積雪は平年より少ないくらいだ。
 その半分だけでも札幌周辺に降ってくれれば良いのだが、天気はなかなか思う通りにはなってくれない。
 山スキーを楽しむためにはまだ雪が足りなさそうなので、林道を歩くだけでアプローチできそうな山を探してみると、近場では奥手稲山がそれに合っていそうだ。
 奥手稲山は札幌国際スキー場側の夕日の沢から登るのが一般的な山スキールートである。しかし、地形図を見ると、手稲区の金山や銭函の桂岡から奥手稲山の山頂近くまで林道が続いている。
 ネットで検索しても、このルートから山スキーで登っている情報があまり見つからず、その代わりに自転車でここを走った情報がヒットしてしまう。
 それでも、自転車で走れるくらいだから、スノーシューで登るのには何の問題もないだろう。
 こうして、シーズン最初の雪山は、買ったばかりのMSRスノーシューの使い初めとトレーニングを兼ねて、銭函の桂岡から奥手稲山に登ることになった。

雪の少ない林道をつぼ足で歩く 家からも近いのでのんびりと行動していたら、月曜朝の通勤ラッシュに巻き込まれ、現地に到着した時には8時半を過ぎてしまっていた。
 春香山に登る時と同じ場所に車を停め、スノーシューをザックに付けたまま歩き始める。
 週末にはスノーモービルのグループも入っていたようで、ただでさえ少ない積雪が圧雪され、ツボ足のままでも普通に歩ける。
 それも、春香山への分かれ道までだった。
 スノーモービルの一団は銭函川に架かる橋を渡って春香山へ向かったようで、その先の林道にはスキーのトレースしかない。
 さすがにツボ足では歩きづらくなったので、そこでスノーシューを履くことにする。

雪が深くなりスノーシューを履く 私達が今まで使っていたスノーシューは、起伏の少ない場所でのトレッキング用のタイプだった。
 それが、一昨年、かみさんのスノーシューの足を入れる部分が自然劣化により千切れてしまったので、それを契機に本格的な山登りにも使えるMSRに買い替える。
 私だけ古いスノーシューで我慢していたけれど、何となく劣化が進んできているし、かみさんが山登り用で私がお散歩用のスノーシューでは一緒に行動する時に支障があるだろうと色々な理由を付けて、アウトドアショップのバーゲンセールでMSRに買い替えたのである。
 山スキーを買って以来スノーシューの出番は減ったと言えども、やっぱり冬の遊びにスノーシューは欠かせないアイテムなのだ。

氷の造形 銭函川沿いの林道を川のせせらぎに耳を傾けながら歩いていく。
 流れの中にはいたるところに氷の造形物ができていて、目を楽しませてくれる。
 まだ雪が少なく、気温も低い最近の天候のおかげで、小さな流れが作り出す氷の芸術が一番美しく仕上がっているようだ。

 林道の上に水が流れている様な場所では、そこだけ雪が積もらずに地面が剥き出しになっている。
 スキーを履いていると、そこを避けながら歩かなければならないが、スノーシューならば気にしないでと歩いていける。
 その歩みが思わず止まってしまった。
 薄く張った氷の上に美しいフラストフラワー(霜の花)が咲いていたのである。
 今朝はそれだけ厳しい冷え込みとなったのだろう。手袋を2枚重ねしていても、寒さで指先がしびれてくる。
 山の上の方には日が当たっているものの、私たちが歩いている場所まではなかなか降りてきてくれそうにない。
 先に進むにしたがって、積雪も増えてくる。距離も高度も大して違わないのに、街中と山中ではやっぱり気象条件は全然違っているようだ。
 これならば山スキーでも全く問題なく登れそうで、下山時のことを考えるとちょっとだけ後悔してしまう。


フロストフラワー
フロストフラワー(霜の花)

林道に陽が当たる ようやく陽が当たってきた。
 これだけ冷え込みが厳しい時は、太陽の光が本当にありがたく感じる。
 直ぐに体も汗ばんできた。
 今回は最近流行のレイヤードシステム5枚重ねに身を固めてきたので、アウターシェル1枚を脱げば良いのだけれど、今日の寒さではそれもためらってしまう。
 そして再び日陰に入ると、さっきまで汗を流していたのが信じられないほどに体が冷えてくる。
 冬山に登る時の体温調節は、レイヤードシステムの謳い文句程には簡単にできないようである。

 スタートから2.6キロほど歩いたところで林道は銭函川から離れる。標高差にして、まだ200mしか登っていない。
 その先から傾斜も少し急になってきたけれど、新しいスノーシューに付いているヒールリフターを使う程でもない。結局今回は、一度もヒールリフターを上げることなく終わってしまった。
 林道が分岐するところまで登ってきた。奥手稲山へはそこを右に曲がるはずなのに、スキーのトレースはそのまま真っ直ぐに続いていた。
動物のトレースを追う そこを行っても星置川の方に下りていくだけなので、林道の縦走でもしたのだろうか。それにしては、ここに来るまでに滑り降りてきたような跡もあったので、何処を目指しているのか意味不明のトレースである。
 私達は予定通り奥手稲山方向に進むことにした。

 トレースも無くなり、真っ白な雪の上には動物たちの足跡があるだけだ。
 それでもラッセルに苦労するような雪の深さではなく、快適な林道歩きが続く。
 標高を上げてくると、前方に一ヶ月前に登ったばかりの銭函天狗山が見えてきた。
 ここから見ると、山の片側が切れ落ちた特徴的な姿が良く分かる。
 ようやく海も見えた。
 その上にかかる雪雲。この雪雲の連なりが石狩や岩見沢の上空まで伸びているのだろう。
 いつの間にか自分達の上空にも雲が広がりつつあった。
 これでは山頂からの眺めはあまり期待できそうにない。


銭函天狗山 雪雲のかかる日本海
片側の切れ落ちた銭函天狗山 海には巨大な雪雲が

 その後も林道が分岐する度に地図を確認しながら進んでいく。
 この辺りの林道は大きく蛇行しているので、奥手稲山に向かってはかなりの遠回りとなっている。真っ直ぐにショートカットすれば歩く距離は半分以下に縮まるのだけれど、今時期の積雪では藪漕ぎしながら歩かなければならない。
 林道から離れたところに時々赤いテープが付いているのは、そうやってショートカットして登った人達の目印なのだろう。

 時計を見ると既に2時間以上経過していた。地図を見ると、まだ半分程度までしか来ていない。もうすぐ11時になろうとしている。このペースでは山頂に着くのは午後1時頃になってしまう。今日はスノーシューなので、下山にもそれなりの時間がかかってしまう。
 そう考えると、この時点で既に登頂が無理なのは明らかである。今時期は午後3時を過ぎればもう暗くなってくるのだ。
 とりあえず12時を目処にして行けるところまで登ることにした。

 それまで順調に登ってきた林道が急に下り坂となる。星置川の方から登ってくる林道と合流する辺りまで一気に40mは下ってしまう。
 地形図で確認すると林道をショートカットすれば無駄に下らなくても済むようである。奥手稲山にこのルートから登るのは、もっと積雪が増えてからの方が良いみたいだ。

星置川からの林道 星置川から登ってくる林道に出てくると、札幌の市街地や手稲山の姿も見えるようになる。
 西風も遮られるので、昼を食べるにはこの辺りがちょうど良さそうだ。
 ここまで来たら奥手稲山の姿くらいは見ておきたかったので、もう少し先まで進むことにする。
 しかし、何処まで行っても奥手稲山の姿は見えず、時計は12時を回ってしまった。
 時間切れである。
 でも、その近くに眺めの良い場所があったので、とりあえずはここまで登ってきた価値はあった。
 日本海から流れ込んだ雪雲が石狩平野を横切ってそのまま岩見沢方面へと続いている様子が一目で見渡せる。
 今回一番楽しみにしていたのは、この雲の様子をを見ることだったのである。


手稲山が見える 奥手稲山は見えてこない
手稲山は見えるんだけれど・・・ 奥手稲山は全然見えてこない

石狩平野に広がる雪雲
日本海から流れてきた雪雲が石狩平野を横切って岩見沢へと流れ込む

林道脇で昼食 そこから少し下った林道脇で昼食にする。
 多分、この場所が無かったら昼食抜きでそのまま下山していただろう。
  気温が低くて風も強い中、ここだけが風も無くて日当たりも良くて、別世界なのである。
 それでも、温かいうどんを食べた後は、体が冷えてきたので、直ぐに片付けて下山を始める。

 途中の登り返しも、スノーシューならば大して気にならない。 これが山スキーならばシールを貼らなければ登れないところである。
 でも、そこを登りきった後は、スノーシューの悲しさを味わうことになる。
 登ってくる時よりは楽になって歩くスピードも速くなるけれど、スキーとは比べものにならない。
 傾斜の緩い林道だけれど、スキーならばノンストップで下れるところだ。

雪上の縞模様 山の西側では風が結構強かったようだ。登ってきた時のトレースが消えかかっている。
 今は青空が広がっているけれど、雪も降っていたのかもしれない。
 木々の影が林道の上に縞模様を描く。
 太陽はもう少しで山の後ろに沈んでしまいそうだ。
 その最後の光が、カラマツに絡みついたツルアジサイの枯れた花を照らし出す。
 冬の森の中では、アジサイの枯れた花さえも心を和ませてくれる。

 車まで戻ってきた時には既に日も沈んでいた。
 次に奥手稲山に登る時は、やっぱり国際スキー場側から登ることになりそうだ。


吹きだまりのできた林道 カラマツ林
山の西側は風当たりも強そうだ 下の方にはカラマツ林が多い

ツルアジサイ ツルアジサイ
ツルアジサイに絡まれたカラマツ 最後の太陽がツルアジサイを照らす

駐車場 428m分岐 星置川林道合流 670m付近
1:40 1:05 0:25
下り 2:15
距離:7.0km 標高差:565m

地 図

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