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音江山(2011/2/11)

登った分を滑る


 3連休の初日は天気予報によると空知の天気が良さそうである。
 そこで、空知方面で何処か良い山がないかなと調べてみると、深川の音江山が面白そうなので目的地はそこに決まった。
 高速道路を深川インターで下りれば登山口は直ぐ近く。札幌からは遠く感じるけれど、時間的にはニセコに行くよりも近いのである。
採石場の駐車スペース しかし、天気予報は外れたみたいで、途中では小雪が舞って、現地に到着しても雲の中に太陽の姿がおぼろげに見えるだけだった。
 駐車スペースは採石場の敷地の中である。事務所には誰もいなかったので、邪魔にならない様な場所に車を停めさせてもらう。
 直ぐ後から車が1台やって来て、ご夫婦の登山者の様である。
 ささっと準備を済ませて私達より先に登り始めた。
 ラッセルが必要な時ならば気が引けるけれど、今日はしっかりとしたトレースもあるので、どちらが先でも関係は無さそうだ。
 私達も直ぐその後に続いて登り始める。

 1.4キロくらいは林道を歩く事になるが、かろうじて登り傾斜なので帰りはここを滑って下りてこられそうだ。
 途中で前のご夫婦を追い越す。
林道を歩く 先週に気温が上がった後、深川では累計で30センチ以上の降雪があったので、昨日か一昨日のトレースがとてもありがたい。
 音江連山登山コース入り口の看板から森の中へと入っていく。
 そこをそのまま真っ直ぐに進めば、今は廃業している沖里河温泉鳩乃湯がある。
 登っている途中で雪に埋もれて朽ちかけているその建物が見下ろせた。
 そこからやや急な登りとなる。
 森の中を真っ直ぐに登るトレース。
 そのトレースが私には少し急すぎて、何度もスキーがスリップしてしまう。
 そうなると、有り難かったはずのトレースに急に腹が立ってくる。
 「もう少し斜めに登れよな〜」とトレースに向かって毒突きながら尾根の上まで上がってきた。


沖里河温泉鳩乃湯 森の中を登る
雪に埋もれて潰れかけた鳩乃湯 急なトレースに苦労させられた

斜面をトラバース そこから先は沢を渡るのだけれど、下山時に登り返しにならない様に等高線に沿う様に進んだ方が良いとされている。
 ところが頼りにしているトレースは、そのセオリーを無視するかの様にアップダウンを繰り返していた。
 「本当にこれで良いのかな〜」と思いながらも、初めて登る山なので素直にそのトレースに従って登っていく。
 しかし、そのトレースが沢を渡るところになって、とうとう信じられなくなってしまった。
 そこで沢に下りると、帰りはここを登らなければならない。
 あらかじめGPSに記録しておいた沢を渡るポイントももう少し先になっている。
 「ダメだ、もっと先に行くぞ!」
 「えっ?だって赤いテープも付いているわよ?」
 「テープが全て正しいとは限らないんだ!」
 と、トレースを無視して自分でラッセルしながら先に歩き始めたけれど、内心では「あ〜ぁ、またやっちゃったかな〜」と少し反省していた。
ちょうど良い場所で沢を渡る これまでに何度も同じような場面で墓穴を掘っているのである。
 しかし今回は違っていた。そこからもう少し登ったところにちょうど良いスノーブリッジがあったのだ。
 そしてそこにも赤いテープがぶら下がっていた。
 「ほらな、言ったとおりだろう〜」と少しだけ得意になる。

 沢から急な斜面を登ったところに消えかけたトレースが残っていた。
 上から滑り降りてきたトレースのようだが、多分先週末のものだろう。
 その後に降った雪で殆ど埋まってしまっている。
 それでも何もない場所を歩くよりは少しはましだった。
 この辺りからは何処を登っても音江山山頂に続く尾根に出られるはずなので、沢伝いに滑り降りてきた様なトレースに従って登り始める。
 しかし、自分でのラッセルはやっぱりきつい。
 隣の尾根の方に向かえば先程までのトレースがあるだろうと考えて登っていくと、良い具合にそのトレースに合流できた。
 ところが再び苦労させられることになる。
私を置いて行ってしまうかみさん 急角度で登るトレースでどうしてもスリップしてしまうのである。
 ずり落ちない様にストックで体を支えながら登らなければならないので、疲労が倍になる。
 かみさんが「先に行っても良い?」と後から声をかけてきた。
 「ダメ!」と言ったものの、体力が続かなくなり、途中で道を譲って先に行かせてやる。
 邪魔者がいなくなったかみさんは一気に自分のペースで登り始め、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
 まるで、1車線の高速道路で遅い車にイライラさせられて、追い越し車線が始まったところで一気にアクセルを踏み込む時の自分を見ている様である。

やっとの思いで尾根に上がると、その後は傾斜も緩くなり、余裕を持って登ることができる。
雪化粧したシラカバが美しい。
そのシラカバの上空には青空ものぞいてきた。
太陽の日射しで暖められたためか、シラカバの枝から雪が剥がれ落ちて、頭の上からパラパラと降ってくる。


雪化粧したシラカバ もう少しで頂上
私の好きな風景が広がる 山頂まで後もう一息

音江山山頂 そうして登り始めてから2時間20分で標高795mの音江山山頂に到着。
 山頂には木が生えていないので、360度の展望を楽しめる。
 大雪連峰や増毛山地、夕張山地まで見渡せるとのことだが、今日は雲が多くて石狩平野の風景くらいしか楽しめない。
 それでも、ゆったりと蛇行する石狩川と深川から滝川へかけての石狩平野の広がりは何とも壮大な眺めである 。
 真っ白な起伏が続く隣のピークも良い感じなので、そちらの方にも行ってみる。
 そこから遠くに見下ろせるのは芦別辺りのの街並みだろうか。
一気に青空が広がってくるかと思ったが、直ぐにまた次の雲が流れてきて青空を隠してしまう。
逆に雲の方が増えてきているみたいだ。
再び音江山の山頂に戻ると、途中で追い越してきたご夫婦が登ってきていた。
地元の滝川の方である。ご主人の方は頂上の眺めを楽しむ様子もなく、直ぐに滑り降りていった。


真っ白な隣のピークへ ダケカンバが美しい
真っ白な隣のピーク 青空が広がってきそうだけど・・・

音江山山頂からの石狩平野の展望
石狩川の蛇行する石狩平野

 そのうちに空は完全に雲に覆われてしまった。
 私達が登ってくるのに合わせて雲が広がるのは最近のパターンである。
雪山の陰で昼食に 頂上から少し滑り降りたところで今日の昼食にする。
 そこにまた二人連れの男女が登ってきた。
 男性の方が「滑るところってこの裏側の斜面になるんですよね?」と聞いてくる。
 先程のご主人が滑り降りていった斜面のことを言っているらしい。
 どうやらこの山は滑りを楽しみに登ってくる人も多いようである。

 私達も昼食を終えて滑りを楽しむことにした。
 目の前に、木々もまばらな大斜面が広がる。
 登ってくる時には気が付かなかった斜面である。
 上級者は頂上直下の北東斜面を滑るようだけれど、ここはそれ程傾斜もきつくなく、我が家にとってはちょうど良いスロープである。
ちょっと重たい雪だけれど、降ってから数日経った雪にしては十分すぎる粉雪だ。


石狩平野に向かって滑り降りる
石狩平野に向かって一気に滑り降りる

音江山を滑る 音江山を滑る
雪は重たいけれど、まだ新雪である 何処まで下っても良い斜面が続く

 そんな楽しい斜面も直ぐに終わるだろうと思ったら、これがずーっと続いているのである。
 結局、沢を渡ったポイントまで、気持ちよく滑り降りることができた。
 苦労して登っても楽しく滑れる場所は少しだけ。そんな山も多いけれど、音江山は登った分はそっくりそのまま滑ることができる山である。
 もっとも、沢を渡った後は例の等高線に沿って歩かなければならないところだ。
 後から登ってきた人のトレースが、私達のトレースよりもっと高い場所に付いていた。
 アップダウンを避けて登ってくればその位置のトレースになるはずで、私が最初にイメージしたルートは間違ってはいなかったようだ。
採石場まで林道を滑り降りる 鳩乃湯まで降りてきて、その廃墟の様子を眺めていたら、扉の無くなった和室の中をタヌキの親子が歩いているのが見えた。
もしもこの鳩乃湯が営業再開していたとしたら、その宿の主人はタヌキが化けたものかもしれないので、注意した方が良いだろう。
 そこから先は、林道を採石場まで殆どノンストップで滑り降りる。
 後を振り返ると空はすっかり雲に覆われていた。
 私達が登るのに合わせて雲が広がったと思っていたけれど、私達が頂上にいた時だけ青空が広がっていたのかもしれない。
 音江山は毎年1回は訪れたい我が家のお気に入りの山になりそうである。



採石場 沖里河温泉 山頂
0:30 1:50
下り 1:00(休憩時間除く)
距離:4.3km 標高差:612m


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