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イワオヌプリ(2007/04/06)

強風が届けてくれた青空


 ニセコ五色温泉の近くでキャンプをして、ついでにイワオヌプリにも登ってしまおうと言う楽しい計画。
 まずはニセコアンヌプリの山麓にテントを設営する。それまで晴れていたのが急に雲が広がってきて、テントを張り終える頃には雪まで舞い始めてしまった。
 この天候では登るのは無理かなと半ば諦めかけていたところ、再び青空が広がってきたので、予定通りイワオヌプリにアタックすることにした。
 この時期になると、五色温泉から倶知安市街に抜ける道路の除雪が始まっているので、冬季間通行止めゲートの手前まで車で入ることができる。
ゲート前から登り始める 冬の間は五色温泉の少し先までしか除雪されていない。
 五色温泉の裏側からこの辺りまでは崖のような斜面が続いているので、五色温泉付近から登り始めたとしてもこのゲート付近まではその斜面を回りこむように登ってこなければならない。
 除雪されている道が延びるおかげで、この時期は少しだけ歩く距離が短くなるのが嬉しい。
 そこから少し登ると、今度はイワオヌプリの急斜面を横に見ながら山の左側へと回りこむように登っていく。
 その先には樹木が一本も生えていない真っ白な世界が広がっている。相当な高い山でなければ見られないようなこんな風景に、簡単に接することができるのもニセコの魅力の一つだろう。
 雪面は堅く締まっているので、他人のトレースなど気にしないで自分の好きなルートで登ることができるのが楽しい。
 後ろを振り返ると、野営地からは小さく見えていたニセコアンヌプリが、距離が離れた分その全容を見渡せるようになり、圧倒的な迫力で迫ってきた。
 上空の雲もどんどんと取れてきて、アンヌプリ全体が日の光を浴びて真っ白に照らし出される。


樹林帯を抜けて 真っ白な風景
緩やかな傾斜を登る 正面の山の左側へと回り込む

ニセコアンヌプリ
アンヌプリが後ろに見える

 そのまま登っていくと正面の急斜面にジグザグのトレースが付けられているのが見えてきたが、そこは自分達のレベルではとても登られないような急傾斜である。
 私よりかなり前を進んでいるかみさんが、何も考えずにそのトレースに向かっていったので、下から合図を送って登る方向を教えてやる。
 ひたすら山の左側へと回りこむのだけれど、その間にできるだけ高度を稼げるように自分の限界のギリギリの角度で登っていく。
 左側へ行けばいくらか傾斜も緩くなるのかと思っていたが、そこもやっぱりかなりの急斜面である。
 表面の雪が少し解けてザラメ状になっているので何とか足場を確保できるが、それでも時々スキーがズルッと横滑りしてしまう。
 後ろから見ているとかみさんもかなり苦労しているようなので、先頭を交代する。
 これでもっと気温が低かったとしたら、私達では登るのは無理だったかもしれない。


真っ白な山 急傾斜
真っ白な山の斜面を登り続ける 時々スキー板がずり落ちるような急斜面

 足を滑らせてそのまま滑落したとしても、それほど高い場所ではないので怪我をするようなことは無いだろう。でもそうは思っていても、緊張のために必要以上に足に力が入ってしまう。
 斜めに登っていくに従って、それまで山の陰に隠れていたニトヌプリやチセヌプリの真っ白な山の姿が現れてきた。
 空は真っ青に澄み渡り、その空を背景とした真っ白な山の姿は息を呑むような美しさだが、今のところその風景に感動しているような余裕は全く無い。


ニトヌプリ
斜面を回り込むとニトヌプリが見えてきた

 できればそのまま向きを変えずに登り続けたかったけれど、岩が剥き出しになった場所に行く手を阻まれ、已む無くキックターンで方向転換しなければならなくなった。
 急斜面で、しかもこのような足場も確保できないようなところでのキックターンは本当に恐怖である。
 不恰好ながらも何とか向きを変えて登り続けると、後ろに続いて登ってくるかみさんの「キャッ」と言う声が聞こえた。
 後ろを振り返るとかみさんは、斜面上方に向かって逆ハの字にスキーを開いたままうつ伏せに倒れこんでいた。起き上がるのを待っていても、ピクリとも動かない。
 これは怪我でもしたのかと心配になったが、どうやらその体勢のままどうすることもできなくて、固まってしまっているだけの話みたいだ。
 私だってその様子を上から見下ろしているだけで精一杯だったが、いつまで待っても起き上がる気配が無いので、そのままズルズルと後ろに下がりながらかみさんのところまで助けに降りる。
 かみさんの居るところから少し下には岩が露出しているので、滑り落ちてその岩にぶつかるのが恐ろしく、余計に緊張しているらしい。
 でも、そこに座り込んでかみさんが起き上がるのを手助けしてやっていると、そこがそれほど危険な場所でもないことが分かってきた。
 二人とも必要以上に恐怖感に囚われて、体が動かなくなっているだけなのかもしれない。
 そこから少し登ったところでようやく傾斜が緩やかになってきたので、スピードを上げて一気にその上まで登り詰めた。
 途中で見えていたニトヌプリの姿を、改めてゆったりした気持ちで楽しむ。
 崖の端まで近寄ると、自分達のテントが張られているアンヌプリ山麓も一望の下に見下ろせた。シラカバ林の間にテントを張ったものだから、そこからではテントをはっきりとは視認できない。


ニセコアンヌプリ
我が家のテントは何処だろう・・・

 我が家は過去に一度だけ登山の経験があるが、その登った山がここイワオヌプリである。息子がまだ小さい頃、ニセコ野営場でキャンプをした時に一緒にここに登って、山頂の少し手前で引き返したことがあった。
 今立っているのが、多分その時に登っきた場所のはずである。山頂まではあとわずかの地点だけれど、当時はそこで息子のエネルギーが切れてしまったのだろう。
 今回は、その最後のわずかの距離を登って山頂を目指した。
 素晴らしい青空が広がっているけれと、風が強くて足を踏ん張っていないと体がよろけそうになる。この強風が雲を取り払ってくれたのだと思えば、文句を言うわけにもいかない。
 頂上の直ぐ下でスキーを外し、最後はつぼ足で登る。頂上には錆びた標識のようなものが立っていたので、そこで記念撮影をした。

頂上までもう少し 偽の頂上
頂上まではもう少し 偽の頂上で記念撮影

 後で知ったのだけれど、イワオヌプリの頂上はそこでは無く、少し離れたところに岩が露出した小さな小山が見えていたが、どうもそこが本当の頂上だったらしい。
 山頂付近はかなり広くて地形も複雑なので、どれが頂上なのかは分かりづらい。
 その本当の山頂まで登ったとしても、そこから見える景色に大した変化は無さそうなので、今回は敢えてそこまでは登らなかった。

本当?の山頂
左が本当?のイワオヌプリ山頂 イワオヌプリの頂上付近の様子

 偽の山頂の反対側まで歩いて行くと、そこからは日本海や積丹半島の海岸線までが見渡せる。
 風さえなければそこからの風景をずっと眺めていたかったけれど、その風に追われるように山頂を後にする。
 あれだけ苦労して登ってきた斜面も、滑り降りる時はあっと言う間である。
 下まで降りてくるとようやく風も当たらなくなり、力強さを増した春の光が優しく照りつけるだけである。
 雪面のウサギの足跡が、その春の光に照らされて浮かび上がっていた。
 今の季節のニセコは本当にお勧めのフィールドである。


ワイスホルン
ワイスホルンの向こうには日本海や積丹の海岸線も見える

チセヌプリにニトヌプリ
真っ白なチセヌプリやニトヌプリの姿

下山中 ウサギの足跡
降りるときはあっと言う間だ ウサギも山を登ってたのかな?

駐車スペース
ゲート前の駐車スペース



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