北海道キャンプ場見聞録
九州の旅(帝釈峡・備中松山城)
鳴滝森林公園キャンプ場・船中泊(4月21日~23日)
いよいよ今回の長旅で、今日がキャンプの最終日となる。
備北オートビレッジを午前8時40分に出て、最初に向かったのは2年前のリベンジシリーズの一つである広島県の帝釈峡。
昨日に続いての峡谷観光である。
こちらも南北18キロの長大な峡谷で見どころも沢山あるけれど、私の目的は上帝釈エリアの雄橋。
雄橋は世界三大天然橋だそうなので、これは見ておかなくてはならないのである。
午前9時20分に上帝釈エリア入口の駐車場に到着。
世界三大天然橋を見られるのだから、かなり大きな観光地を想像していたが、田舎道を走って辿り着いた場所は、結構地味な観光地の様相だった。
目的の雄橋は駐車場から1キロほど、それだけでは物足りないのでそこから更に1キロ先にある素麺滝を最終目的地として歩くことにした。
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川沿いに遊歩道が続く
歩き始めてすぐに鍾乳洞の「白雲洞」があったが、まだ営業前だったので帰りに寄ることにして先に進む。
次に現れたのは「鬼の唐門」と呼ばれる巨大なトンネル。
鍾乳洞があることからも、この辺りは石灰岩の地質であることが分かる。
この「鬼の唐門」も石灰岩が侵食されて、大きな穴が空いたのだろう。
足場は悪いけれどその中を歩いて行けるようなので、奥まで入ってみた
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鬼の唐門に入ってみる
崖の上の方にも穴が空いていたり、侵食された様子がとてもダイナミックで見ごたえがあった。
洞窟の先には谷が続いていたが、その奥から吹いてくる風がとても冷たく感じる。
何処かに大きな風穴でもあるのだろうか。
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鬼の唐門の反対側の様子
雄橋に向かう遊歩道は帝釈川沿いに続いている。
なかなか美しい渓流である。
昨日の三段峡の遊歩道よりも、周辺に沢山の花が咲いていて、それらを楽しみながら歩いていく。
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川縁や山の斜面には色々な花が咲いている
ただ、渓流を流れる水は三段峡よりも少し濁り気味である。
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川を背景にして咲く花は一際美しい
やがて前方に雄橋が見えてきた。
その印象は、「写真で見たとおりと天然橋だな」程度のものだった。
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人が下に立つとその大きさが良く分かる
しかし、近づいていくに従ってその大きさが分かってきた。
写真だけでは大きさが伝わらないけれど、その下に人が立って初めてその大きさを実感できるのだ。
全長90m・幅18m・厚さ24m・川底からの高さ40m。
世界三大天然橋の一つと言われているのも、十分に納得できた。
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これだけの穴が空くのにどれだけの年月を要するのだろう
雄橋から先も、川沿いに遊歩道が続く。
途中にトンネルがあったり、古い橋があったりと退屈することがない。
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周りの風景に溶け込むような橋だ
更に先に進むと「断魚渓」と呼ばれる場所があった。
比較的穏やかな流れの帝釈川だけれど、この部分だけが岩の間をながれる激流となっているのだ。
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ここだけが激しい流れとなる断魚渓
最後の素麺滝への道は、倒木により通行止めになっていて諦めるしかなかった。
「素麺滝」の名前から、一体どんな様子の滝なのだろうと楽しみにしていたのに、残念である。
帰りに立ち寄った「白雲洞」は1人250円の料金がかかるけれど、その金額以上に楽しめる鍾乳洞だった。
一番印象的だったのはコウモリ。
洞窟の中でこれだけ近くでコウモリを見たのは初めてだったのである。
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コウモリも棲む白雲洞
午前11時20分に駐車場まで戻ってきた。
約2時間のトレッキングだったけれど、私のは昨日の三段峡よりもこちらの帝釈峡の方が楽しめた印象である。
昼食は、道の駅「遊YOU さろん東城」の手打ちそばを食べられるレストランに入ろうと思っていたけれど、運悪く定休日。
しょうがなく、隣にあった「中華料理北京」に入ってラーメンを食べたけれど、今回の旅初めての不味いラーメンを食べさせられた。
気を取り直して、今日もう一箇所観光することにしていた岡山県高梁市の備中松山城へ向かう。
この日は気温がどんどん上がり、道路上の気温表示は28度になっていた。
備中松山城は現存天守12城の一つで、現存天守の中では唯一の山城である。
さすがに山城だけあって、車で登るのも大変な山道で、最後の方はすれ違いも出来ないくらいの細くて曲がりくねった道となり、係の人が無線で連絡を取りながら1台ずつ車を誘導していた。
やっと駐車場に着いたと思ったら、そこから天守までは更に徒歩20分の階段が待っていた。
私達はその階段を意地になって10分で駆け上がり、おかげで私の動悸が治まるまで暫く時間がかかったのである。
ここに来る前に温泉に入ろうかとの案もあったけれど、ここで汗だくになるので、入らなくて正解だったようだ。
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この階段を駆け上がって心臓が口から飛び出しそうになった
天守は何度か大修理が行われたようで、中に入っても現存天守の歴史は正直あまり感じられない。
見応えがあったのは、山城らしい入り組んだ石垣の方だった。
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建物よりも石垣の方が美しかった備中松山城、その前では城主様の撮影会
それと、この城の城主「猫のさんじゅーろー」である。
この城主様は、平成30年7月豪雨の後、備中松山城三の丸で保護され、今はすっかり城の人気ものになっているらしい。
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さすがに城主様は貫禄がお有りだ
備中松山城から降りて今日のキャンプ地である岡山県吉備中央町の鳴滝森林公園キャンプ場へと向かう。
高梁市の市街地を出ると急な上り坂となる。
途中にはループ橋があるくらいに一気に山の上へと登ってきた。
そこに展望所があって、高梁市を一望できる。
こうして見ると山に囲まれた盆地の中に高梁市があることが良く分かった。
同じ「たかはし」ということもあり、高梁市のことは子供の頃から名前だけは知っていたので、何となく親しみを感じていた。
最後にその姿を見ることができたのは、個人的にはとても嬉しいことだった。
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展望所から高梁市を一望、右側の山の上に備中松山城がある
そうして午後3時45分、今回の旅最後のキャンプ地である鳴滝森林公園キャンプ場に到着。
この場所を決めるのにかなり悩んだけれど、周辺で他にオートキャンプができる適当なキャンプ場が見つからずに、しょうがなくここに決めた感じなのである。
料金は電源、流し台、野外炉のあるオートサイトが1区画4190円と、やや高めだけれど許容範囲内。
ただ、サイトが狭いとの情報があり、それだけが気になっていた。
受付のおばさんは感じの良い方で、サイトは見てから決めて下さいと言われる。
バンガローに若者グループが入っていて少しうるさいかも知れないとのことだったので、7つあるサイトの中の一番奥のサイトに決める。
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サイトはかなり狭い
情報通りに各サイトはとても狭く、我が家のヴィガスがかろうじて収まるくらいの広さしかない。
かみさんのテントを張る場所もない。
キャンプ場の注意事項にサイト以外の場所にテントを張らないことと書かれていたが、今日は他にキャンパーもいないので、管理人さんが居なくなったら少し広い場所に移すことにして、とりあえずヴィガスの横に張っておく。
野外炉もあるけれど、テントに近すぎるのでここで焚き火をするのはちょっと怖い。
ただ直ぐ近くにファイヤーサークルがあったので、焚き火はそこでできそうだ。
流し台は昨日の備北オートビレッジに有ったのと全く同じタイプ。
これが岡山県の標準タイプなのだろうか。
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こじんまりしているけれど快適なサイトだ
サイトの直ぐ前に川が流れているので、その音のおかげで若者たちの騒ぐ声もあまり気にならない。
その川の上流にある滝が鳴滝である。
サイトからも見えるくらいの直ぐ近くにある。
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サイト前を流れる川
焚き火用の薪も、少し湿っているものの、十分に確保できた。
心配していたけれど、これならば快適なキャンプを楽しめそうだ。
今日は温泉に入れなかったので、キャンプ場の温水シャワーを利用する。
5分間200円と、ちょっと高い。
温水が出るまで少し時間がかかると書かれていたけれど、最初の200円は殆ど水だけで終わってしまう。
結局もう200円追加して、温泉に入るのと大して変わらない値段になってしまう。
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今回の旅での一番の焚き火を楽しめた
夕食を終えて直ぐに焚き火を始める。
直火での焚き火は、焚き火台を使うのとは気分的に全然違う。
このキャンプ場はゴミを捨てられないので、車にゴミを積んだままフェリーに乗ることになるのかと覚悟していたが、この焚火のおかげでゴミは殆ど燃やすことができた。
長旅最後の夜を盛大な焚き火で祝った。
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サイト横の大岩、この上にグランドシートを広げると直ぐに乾く
翌朝も、起きて直ぐに焚き火を始める。
天気も良くて、濡れたテントやシートも完全に乾かして撤収できそうだ。
朝食を済ませて滝の周辺をゆっくりと散策。
巨岩も多くて、なかなか良いところである。
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小さいけれど美しい滝だ
そうして気持ちよく撤収を終えて、午前9時過ぎにキャンプ場を出発。
このキャンプが今回の旅の中でのベストキャンプだったような気がした。
今日は午後23時55分発のフェリーに間に合うように敦賀港を目指すだけだ。
移動距離はおよそ330キロ。
実は、当初は舞鶴からフェリーに乗る予定だったのだが、フェリー会社の都合で敦賀発に変更になったのであ。
おかげで90キロ近く余計に走らされることになる。
1日ずらせば舞鶴発のフェリーにも乗れたけれど、何となく最初の予定を変えたくはなかったのだ。
この日にまず向かったのも、2年前のリベンジシリーズである北荘の棚田。
岡山県には日本棚田百選に認定されている棚田が4箇所も集まっている場所があり、2年前にはそこをどうやって回るか詳細に検討していたのである。
しかし、問題はやっぱり棚田までのアクセス。
今回はその中でアクセス道路が比較的広そうな北荘の棚田だけを目的地としたのである。
棚田へ向かう途中に立ち寄った道の駅で、岡山名物と書かれた生クリームパンを購入。
岡山名物は既にきびだんごを食べていたけれど、名物を言われれば買わないわけにはいかない。
と言っても、210円の定価で売られていれば買わなかったと思うけれど、賞味期限の近い商品が半額で売られていたので買ってしまったのである。
105円で食べるには、とても美味しいパンだった。
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賞味期限は今日までなので半額
そうして脱輪することもなく午前10時半、無事に北荘棚田に到着。
一昨日に見た井仁の棚田では水が張られ始めていたけれど、こちらはまだ。
もしも水が張られていたとしたら、ここの景観は素晴らしいものになりそうだ。
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規模の大きい棚田だった
棚田の下に見えているため池は神之淵池といって、こちらはため池百選に選定されているらしい。
そんなため池を見下ろしながら、地図を眺めて次に向かう場所を探す。
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ため池百選と言っても、普通の池と大して変わりはない
そうして決めたのが岡山県津山市の津山城址。
今回持参している昭文社の道路地図「ライトマップル」には、100名城や棚田100選などが赤字で表示されている。
棚田もお城も北海道ではあまり見られないので、どうしても興味を持ってしまうのである。
今日も気温は28度まで上がっていた。
午前11時半に津山城(鶴山公園)に到着。
ここには天守閣も無く、復元された備中櫓があるだけなのだが、それでも入園料を310円も取られる。
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この程度ならば無料で公開して欲しい気がした
備中櫓は特に見るほどのものでもなかったが、周りの石垣は見応えがあり、城跡からの眺めも良かった。
ここは桜100選にも選定されていて、桜の時期ならば入園料分は楽しめそうな気がした。
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石垣は美しい
昼食は、鶴山公園の駐車場に車を停めたまま街まで降りて、ネットで調べた「中華そばぴーとん」に入る。
昨日食べたラーメンとは比べ物にならないくらいに美味しい中華そばを味わえた。
その店のある商店街も、何となく味のある街並みだった。
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新地通商店街の町並み
もっと観光もしたかったけれど、敦賀まではまだ遠いので、高速道路で一気に走ることにする。
そしてある程度時間も稼げたので、高浜ICで高速を降り、一般道に入る。
途中で何箇所か気になる場所もあったけれど、まずは敦賀まで行かないと落ち着かないので、先を急ぐ。
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高速道路ばかり走っていると、田舎のこんな風景も見られない
そうして午後6時前に敦賀市に到着。
スーパー銭湯の「越のゆ敦賀店」で風呂に入り、近くにあった「和食麺処サガミ敦賀店」で夕食。
買い出しをしてからフェリーターミナルに向かい、そこで出港時間を待つだけとなる。
こうしてほぼ一ヶ月に渡る今回の旅を終えることとなったのだが、その間に日本各地でコロナ感染が広がりつつあった。
旅の間は何処に行っても検温され、そこでもしも体温が高ければ、施設の利用や宿泊を断られることになるのだろう。
帰りのフェリーでさえ、乗船できなくなる事態もありえたのである。
旅行中に体調を崩さなくて良かったとつくづく感じた。
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フェリーに乗って北海道へ
去年の春の奈良旅、そして秋の京都旅、私達が旅に出ている間にコロナの感染が広がるのはお決まりのパターンになってしまったようだ。
コロナなんか気にしないで、純粋に旅を楽しめるような日が早く訪れることを望んでやまない。