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当別川

(西野沢川下流〜開運橋)

4連休の期間中、天気予報はずーっと雨マークばかり。
遠出の計画も全て流れてしまったけれど、ちょうど良い具合にカヌークラブの有志で当別川を下る計画があったので、そこに参加させてもらうことにする。
カヌーの場合、ドライスーツを着ているので、雨の中でも何とか遊ぶことができるのだ。
とは言っても、雨に濡れながら下るのでは気分も盛り上がらない。

川下り当日は薄日も射すくらいのまずまずの天気になってくれた。
それでも、集合場所の道民の森青山中央案内所に向かって車を走らせている途中、ポツポツと落ちてくる雨粒が時々フロントガラスを濡らす。
当別町の市街地を過ぎると、周辺に白いものが目立つようになってきた。
まだ氷の残る当別ふくろう湖それが当別ダム辺りからは完全な雪景色に変わってしまう。
去年完成したばかりの当別ダムに水が溜まっているのを見るのはこれが初めてである。
ダム湖の湖畔には「当別ふくろう湖」と書かれた看板が立っていた。命名した気持ちは分かるけれど、語呂が良いとは言い難いところだ。

そのふくろう湖の湖面が、所々でまだ結氷しているのには驚かされた
山奥の湖がこの時期でも結氷しているのは分かるけれど、この辺りは里山と言っても良いくらいの場所なのだ

今回の当別川は、川下りよりも山菜採りをメインにして企画されたものである。
しかし、これではどう考えても山菜採りどころの話ではなさそうだ。

集まったメンバーは我が家を含めて8名。
皆それぞれ、羊蹄山の春スキーとか道南旅行とかの予定を、急遽山菜採りに変えた人達ばかりである。

我が家はが当別川を下るのは、6年前にクラブの例会で一度下って以来になる。
今回の川下りゴール地点は道民の森青山中央案内所のすぐ近くの開運橋。ダム湖が満水の今時期は、その橋の少し先からもう湖が始まっている。
スタート地点の様子6年前はもっと下流まで下ったはずだけど、そこはすでにもうダム湖の底に沈んでしまった。

開運橋に車を2台回してから、皆でスタート地点に向かう。
上流に進むにしたがって、積雪はますます多くなり、これでは駐車スペースさえ無さそうだと心配していたら、ちょうど良い具合に駐車スペースが除雪されている場所があった。
そこが今日のスタート地点であり、川からも近く、出艇するにはちょうど良いところだ。

それにしても雪が多く、5年前の4月に雨竜川の朱鞠内付近を下った時のことを思い出した。
積雪のおかげで、大きなカナディアンカヌーをソリの様に引っ張って歩けるのが嬉しいのである。

スタート地点の様子到着が遅れているI田さんを皆で待っていたが、しびれを切らして先に下り始めることにした。
青山中央案内所で集合時間の9時半にI田さんに電話を入れたところ「今、望来にいる」との返事が返ってきていたのだ。
I田さんの自宅は札幌市内の北区で、参加メンバーの中では集合場所までは一番近いところに住んでいる。
「それなのに、なんで望来にいるわけ?」
「厚田川を下るのと間違えたのでは?」
「電話しなかったらどうしていたんだろう?」
??だらけのI田さんなのである。

川は増水して流れも速く、雪の少ない場所から強引に出艇したが、直ぐ下流の倒木に引っ掛かって冷やりとさせられる。
冷たい雪解け水の流れる川で沈はしたくない。

増水した当別川流れは速いけれど、特に危険な場所もなく、川岸に注意を払いながら順調に下っていく。
前回はエゾノリュウキンカなども見られたのに、まだ雪の下に埋もれたままだ。
と言うか、その時よりも水位が高そうなので、まだ水面下に沈んだままなのかもしれない。

土壁が露出しているところでは更に目を皿にして川岸に注意を払うが、山菜どころか他の植物が育っている姿さえ見当たらない。
それなのに、去年の同じ時期にここを下っているI山さんやI上さんは、全く動じる素振りも無い。
「例の場所はもっと先だったっけ?」
例の場所って言っても、この積雪状態の中でアイヌネギが育っている様な場所があるなんて、私にはどうしても信じられなかった。


まだ雪深い当別川   ネギを探す
これだけ雪が多いと山菜は厳しそうだ   一生懸命ネギを探すが・・・

しばらく下っていくと、先行していたI山さん達が岸に上陸していた。
そこが「例の場所」なのだろうか?
遠くの斜面にネギが見えるカヌーを岸に寄せると、そこからかなり離れたところの土が剥き出しになった山の斜面で、一部だけ緑に色づいているのが見えていた。
しかしその場所は急斜面のかなり上の方で、とてもそこまでは登っていけるとは思えない。
しかも、偵察から戻ってきたI上さんによると、斜面の上の方から雪や石がまだ落ちてきているとのこと。
土が剥き出しになっているその斜面は、全層雪崩が起こった跡だったのである。
そんなところでなければ、この近辺で土が出ている場所なんてあるわけがないのだ。

そこを直接登るのは無理そうなので、I山さんが別ルートからその斜面の上に出ることができないか探しに行った。
他のメンバーはそれぞれの荷物の中から、おもむろに軽アイゼンを取り出して装着し始める。
「えっ?!マジで?」
I山さんがクラブの掲示板に「かなりの急斜面を登ることになる」と書いていたので、私は冗談で「それじゃあ軽アイゼンでも持っていった方が良いかな」と書き込んでおいたのだ。
まさか、皆が本当に持ってきているとは思わなかった。

土が露出している場所までは雪の急斜面を登ることになるが、そこはアイゼンが無くても何とかなった。ただ、柔らかいパドリングシューズなものだから、つま先を雪面に蹴り込むことができずに苦労する。
後ろからK姫さんがスタスタと私を追い越していく。足元を見ると普通のシューズを履いていた。その準備の良さと言うか、ネギに対する執念に恐れ入る。
全層雪崩の跡がかみさんはその雪面を登れずに早々に撤退宣言。
後でかみさんのパドリングシューズの裏を見ると、ほとんどツルツルにすり減っていて、これでは雪の斜面は登られない。
もっとも、パドリングシューズの性能に雪の斜面を登ることまでは求められてはいないのである。

ようやく斜面を登りきった先には、全層雪崩の大きなデブリがゴロゴロと転がっていた。
斜面のもっと上にはまだ雪が残っているところもあるので、それらが落ちてくることも考えられ、あまり気持ちの良い眺めではない。

デブリの先には土の急斜面が立ちはだかる。
軽アイゼンが本当に役に立つのはここからだった。
湿った土の急斜面はヌルヌルしていて、とても滑りやすいのだ。
簡単には洗濯もできないドライスーツを着たまま、こんなところで滑って転んで滑落でもしたら、大変なことになってしまう。
アイゼンを装着してスイスイと登っていく人達を横目に、私も土の中から少しだけ浮き出ている様な木の根などを唯一の手掛かりにして、悪戦苦闘しながら登っていく。
皆でネギ採りに夢中同じくアイゼンを持ってこなかったT津さんも、斜面の途中で立ち往生していたが、先に登った人からロープを出してもらって、何とか上まで上がれたようだ。
そのロープは川で使うレスキュー用のスローロープ。使い方を完全に間違っているとしか言いようがない。

ようやくネギの生えている場所まで、たどり着いた。
芽を出したばかりの小さなものばかり。
でも、スーパーで売られているのはこれくらいの大きさで、葉が大きく広がったものより美味しそうに見える。
別ルートを探していたI山さんも、結局は私達と同じ場所を登ってくることとなり、遅れた分を取り戻そうと一心不乱にネギを採りはじめた。

所々に葉先が千切れたものが混ざっている。周りには鹿の足跡もあるので、それは多分鹿が食べた跡だと思われる。
鹿達も、こんな急斜面の上にある自分たちの餌場が、まさか人間達に侵されるとは思ってもいなかったことだろう。


急斜面に生えるアイヌネギ   ロープが役に立つ
急斜面に生えるネギを収穫するのは大変   レスキュー用のロープが思わぬところで役立つ

ネギ斜面からの眺め
ネギ斜面からは良い眺めを楽しめた

昼食タイム下まで降りてきて、そのまま昼食休憩。
目的を達成できて、皆満足そうな表情を浮かべている。
そこからネギの生えていた斜面を見上げると、到着した時には緑色に色づいていた場所が、今は茶色の土が剥き出しになっていた。
これでは鹿さん達もたまったものではない。

その後も川を下りながら他のメンバーは必死になって周辺の探査を続けている。
先程の場所で十分に収穫できたはずなのに、それではまだまだ足りないと言った様子である。
私達はネギのことよりも、川岸の崖に露出しているノジュール状の塊が気になってしょうがない。
考えてみると、去年の秋に化石を採取した望来の海岸や、ノジュールがゴロゴロ転がっていた厚田川とはそれ程離れていなくて、地質的にも同じような場所なのかもしれない。

クジラの骨化石か崖下のエディに入って一休みしている時、目の前の岩の中に奇妙な石が露出していた。
周りの岩とは明らかに組成が違っているようで、その形も何となく脊椎の骨の様に見える。

かみさんに、「もしかしたらこれって恐竜の骨じゃないの?」と言ってみたが、「何寝ぼけたこと言ってるの!」って感じで全然取り合ってくれない。
他のメンバーに言うのも何となく恥ずかしくて、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。
後で調べたところ、これは恐竜の骨化石ではなく、クジラ類の骨らしいとの事であった

当別川を下る時には、途中にある壊れた吊り橋が障害になる。吊り橋のワイヤーが川を横断するようにぶら下がっているのだ。
今回は水が多かったので、一部水没した部分を通過することができた。

その先で倒木が川を塞いでいるところが一か所。
カヤックは水面との隙間をギリギリで通過できたが、流れも速くてカナディアンで通過するのはリスクが大き過ぎるので、ここは素直にポーテージする。

またネギを見つけたのか?所々に道道から川を見渡せる場所がある。
川を下る私達を発見したのか、突然スピードを落とす車がいる。
こんな時期にこんなところを下っているカヌーを見れば、一般の人には驚くべき風景として映るのは確かである。

途中でまたI山さん達がネギを発見したようだ。不安定な場所から強引に上陸して、急な崖をよじ登り始める。
ゴールも近いので、他のメンバーは先に下ることにした。
青山奥橋下流の堰堤は左岸からポーテージ。
その後、開運橋までのんびりと下ろうと思っていたら、今日初めての瀬と言えるような場所が現れた。
ここでわざわざ危険を冒すようなことはしたくないので、波の高い場所を避けながら下る。

開運橋で上陸そうして開運橋手前の左岸に上陸。
しばらくして、最後までネギに執着していた3艇も下ってきた。
苦労した割に収穫は少なかったようだ。

午後から雨の予報が出ていた割には比較的天気にも恵まれ、ネギも収穫できて、楽しい休日を過ごすことができた。
この日の夜から降り始めた雨は連休最終日の翌日も夕方ころまで降り続いていた。
GW期間中の10日間、札幌では毎日降雨を記録し、最高気温が10度を超えたのは、結局はこの日だけ。
一番良い時に川を下っていたようだ。


波の高い瀬   開運橋の上から
ちょっと波の高い瀬もあった   最後にネギ組が到着

2013年5月5日 曇り時々晴れ一時雨


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