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尻別川

(境橋〜堰堤)

カヌークラブのメンバーから「週末に尻別川の喜茂別コースを下りませんか」との誘いを受ける。
その次の週末にはクラブの正式な例会で、同じ尻別川の京極からのラフトコースを下ることになっていたが、特に予定も無かったので直ぐにOKの返事をした。
集合写真集まったのは我が家を含めて6名。
O橋会長は初めてCC(クローズドデッキのカナディアン)での参加である。
カナディアンと言っても見かけはカヤックと同じ。そこに正座スタイルで座ってシングルブレードパドルで漕ぐのがCCである。
何時もはOC-1に乗っているO橋会長だけど、車へのカヌーの積み下ろしが大変になってきたので、歳をとっても大丈夫なようにCCに変更するのだとか。
1人でカナディアンを持ち上げられない私にとっては他人ごとではない話である。
大型のカナディアンカヌーで遊びまわれるのも後数年かもしれない。

今回はI山さんの提案により、何時も下っている場所の更に上流、境橋からスタートすることになった。
ゴールは堰堤の手前。車を回送するのにも13キロ以上の距離があり、長い川下りになりそうだ。

川岸に咲くオオハンゴンソウ尻別川の上流部と聞いて、かなりハードな川を想像していたが、境橋から下流は至って穏やかな流れである。
川岸はオオハンゴンソウの黄色い花で埋め尽くされている。

少し下るとオロウエンシリベツ川が合流して少し水が増えた。
それでも、川のイメージは田舎を流れる小川である。
たまに少しだけ流れの速い瀬の様な場所がある。
それでも、今日がCCによる川デビューとも言えるO橋会長は「心臓が口から飛び出しそうだ〜!」と悲鳴を上げながら下っている。

最近は雨が少ないので、川の水が少ないことを心配していたが、カヌーの底を擦らない程度の水量はあって、快適に下ることができる。
この辺りは尻別岳の姿がとても勇壮に見え、下るにしたがってその姿が更に大きくなってくる。
その右手に見える羊蹄山は、尻別岳よりずっと小さく見えて、ここでは尻別岳が完全に主役の座を奪っている。
おまけに羊蹄山の山頂は雲に隠れてしまっているので、尚更である。


尻別岳と羊蹄山
尻別岳に圧倒されて羊蹄山は影が薄い

変わった岩壁の風景川の右岸側は小高い丘陵地となっていて、丘陵地の川側にはそこだけ緑が抜け落ちたように岩壁が続いている。
表面がザラザラとしたその様子は、岩壁というよりも土壁の雰囲気だ。地質的には凝灰岩になるのだろうか。
そんな凝灰岩の岩壁が、川岸から直接聳え立っている様な場所もあり、変化に富んだ風景を楽しむことができる。

ただ、川の流れの方は楽しむと言うにはちょっと物足りない。
4日前に歴舟川を下った時はキャンプ道具を満載していたので、楽しいそうな瀬があってもチキンルートばかりを下っていた。
緊張することもなく楽しく川を下るそれでちょっと欲求不満気味になっていたので、今日は瀬があれば積極的にヒーローコースを攻めようと思っていた。
ところが、そもそもそんなヒーローコースと呼ばれるような瀬はどこにも無いのである。

でもそのおかげで、初めて下る川なのに余計な緊張をすることもなく、いつも以上に周りの風景や植物に集中することができる。
川の水も十分に澄んでいて、快適な川下りが続く。

下っている先の方に小さな落ち込みらしきものが見えてきて、波もそれなりに高そうだった。
「ようやく少しは少しは楽しめるかな」と思いながら、何気なく下っていく。
ところが、近づいてみると何だか嫌らしそうな波が立っていた。
危機一髪そのまま突っ込んだところ、落ちた先に岩でも隠れていたのか、カヌーが大きく傾き、ガンネルを越えて水が一気に入ってくる。
かみさんは殆ど沈寸前の状態まで体が傾いたが、何とか持ちこたえることができて、事なきを得た。
後ろを振り返ると、直ぐ後から下ってきていたO橋会長が慌てふためいているのが見えて思わず笑ってしまう。
どんな川でも油断は禁物なのである。

川底が、流れと並行した方向に溝状にえぐれている場所があった。
水量が増えると、そこにどんな波が立つのか、ちょっと想像がつかない。
途中の橋では、橋脚に流木が絡まって流れを殆ど塞いでいるところもあった。
穏やかな川のように見えても、ちょっとした増水で突然牙を剥いてくることもあるので、決して甘く見てはいけないのだ。


えぐれた川底   川を塞ぐ流木の山
左側の川底は溝状にえぐれている   水が増えればここは危険だ

尻別岳と尻別橋ようやく国道230号の尻別橋まで下ってきた。
ここまで休みなく漕いで約50分。結構時間がかかっている。
尻別岳が更に大きく迫ってくる。

ここからは一昨年の春の例会で一度下った区間である。
その時は、雪解け水による増水で楽しい流れになっていたけれど、今日はこれまでの区間と同じく穏やかな流れが続いていた。
頭上の柳の枝に引っ掛かっているゴミを見ると、今よりも3m以上増水することもあるようだ。
そんな時の川の様子を頭の中に思い浮かべると、ゾッとしてしまう。

この辺りは釣り人も多い。
カヌーがここを下ってくることは殆どないだろうけれど、挨拶をすると笑顔で応じてくれて、尻別川の釣り人は総じて良い人が多い気がする。

喜茂別川合流部相川橋の下流や喜茂別川合流部の手前にはちょっとした瀬があるけれど、今日の水量では楽しめる程ではない。

喜茂別川合流部では本流を塞いだ意地悪な倒木おかげで、今日初めてカヌーを降りなければならなかった。

そこから先は何度も下っている区間である。
特に難しい瀬もなくのんびりと下ることができる。

尻別岳に代わって、今度は羊蹄山がその美しい姿を披露してくれる区間でもあるけれど、下り始めた頃よりも更に雲が広がってしまい、これでは楽しみも半減である。
瀬の楽しみもなく、景色の楽しみもないとなれば、残る楽しみはO橋会長のCCによる初沈脱だけである。
ところがこちらの方も、既にCCでのダウンリバーにかなり慣れてきたようで、沈脱は期待できなくなってしまった。

岩盤の川原で休憩途中の岩盤の川原に上陸して昼食にする。
川の上にいると気が付かないけれど、気温もかなり上がってきているようだ。
休憩の後、暑いからと言ってかみさんは、両足を水に付けたままパドリングする様な有様である。

留産橋を過ぎた先に、川を横断するように大きな岩が並べられている場所がある。
車の回送時にチラッと見たところでは、左岸寄りの岩の間を通り抜ければ問題ないだろうと考えていた。
ところが、先頭を下っていたメンバーがその手前で岸に上陸した。
以前は初心者でも下れるような場所だったはずなのに、少し落差が大きくなった気がする。
岩の上に乗ってその流れを見てみると、水面下に蛇籠が見えていた。おまけにその一部から針金も飛び出ている。
そのまま下れそうにも見えるけれど、こんなところでわざわざ危険を冒す必要もない。
全員がポーテージすることにした。


改修された床止め   水面下の蛇籠
改修された床止めはポーテージ   蛇籠が崩れて針金が見えている

川に足を浸けながら下る去年の春に下った時は何も気が付かなかったので、その後に改修工事が行われたのだろう。
以前は並べられた岩を見て、これに何の意味があるのだろうと考えていたが、こうして改修されたところを見ると、やっぱり何かの意味があるらしい。

一般的に言われる床止め工の一種で、川底の洗掘を防ぐために作られるものだとは分かるけれど、この区間の尻別川で床止めがあるのはここだけである。

工事の意味は問わないとしても、蛇籠を使った工法はカヌーをする人間にはあまり好ましいものではない。
コンクリートブロックを使うよりも自然に優しいとして蛇籠を使うのだろうが、大洪水などでその蛇籠が流されでもしたら、自然に優しい構造物が、一転してパドラーにとっては危険極まりない構造物と化してしまうのである。

その下流にも2か所ほど似たような床止めがあるが、そちらはそのまま下ることができた。
水量によって状況も変わってくるので、この区間を下る時は注意が必要なポイントである。

上流側には尻別岳が見える水も少し濁ってきて、羊蹄山は雲に隠れてしまい、気温はさらに上がり、楽しい瀬もなく、川を下っていて久しぶりに「早くゴールに着かないかな」と思ってしまった。
そうして15キロ下って、車を回してあった堰堤の手前に上陸。
後半は少しだれてしまったけれど、尻別川の上流部はなかなか楽しい川だった。
機会があればもっと上流からも下ってみたいものである。

2012年8月19日 曇り時々晴れ 
当日12:00尻別川水位(喜茂別下流観測所) 252.87m 



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