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空知川

(国体コース〜山畔橋)

 カヌークラブ7月例会2日目は、空知川の国体コースから下流を下る。
 前日のシーソラプチ川は参加者も少なかったけれど、今日はゲスト参加も含め総勢20名となった。それでもやっぱり、天気も良くなってきた割には、何時もよりは少ない気がする。
国体コーススタート地点 この区間を下るときの難点は、スタートして直ぐ、体がほぐれてくる前に国体コースの瀬を下らなければならないことだ。
 前日からの参加者は一度下った場所なので、それほどのプレッシャーは感じないけれど、今日だけの参加者にはちょっと厳しそうだ。
 そう思っていたら、去年は果敢に国体コースに挑んだはずのK−さんにK藤さん、それにくわえてベテランのK島さんまでが、国体コースをパスしてその下流から下ると言う。
 かみさんもその仲間に入りたそうにして、暫く迷っていたけれど、ようやく下る決心が付いたようである。
 昨日から比べたら水位も少し下がったみたいで、その分、スタート地点の水も昨日より澄んでいるように見える。
 雲の間から日が射してくると、その水がエメラルドグリーンに輝き、本当に美しい。川下りのスタート地点としては、ここが私の一番好きな場所である。
 その美しい川をバックに集合写真を撮って、川下りのスタート。
 三段の瀬では、昨日の様にならないように気を付けていたけれど、また、下った後にホッとして漕ぐのを止めてしまったものだから、昨日と同じ場所にカヌーが入り込んでしまう。
 さすがに今日は慌てることも無かったので、バランスを崩さずにそこから無事に抜け出せた。


三段の瀬   三段の瀬
昨日と全く同じルートで   三段の瀬クリア!

三段の瀬をクリアしたけど・・・
と油断していたら、また昨日と同じくカヌーが回されてしまった

 次はパチンコ岩。
 昨日が上手く下れたからといって、今日もそうなるとは限らない。
パチンコ岩に向かう 昨日より水が減っているのだから、本当ならば下りやすくなっている筈だけれど、川の流れはそう単純なものではない。
 そんな考えばかりが浮かんできて、下る前から何だか嫌な予感がしていた。
 パチンコ岩の先で、N野さんの赤いカヤックが腹を出しているのが見えたが、何とか、岸に上がれたようである。
 そんな様子を眺めながら躊躇っているうちに、いつの間にか周りには誰もいなくなってしまっていた。
 覚悟を決めて下り始める。
 下るルートは昨日と同じ、パチンコ岩の左側。
 パチンコ岩にぶつかる本流の大きな波。
 その波にカヌーが持ち上げられ、パドルを入れるのを一瞬躊躇ってしまった。
 その遅れが命取りとなって、本流から抜け出すことができず、カヌーが横向きになったまま、一気にパチンコ岩まで押し流される。


動作が遅れた   目の前に迫るパチンコ岩
時、既に遅し!   みるみる迫るパチンコ岩

 張り付いてしまう!と焦ったけれど、カヌーはスルリとパチンコ岩の左に抜け出せそうになった。
 しかし、ホッとしたのもつかの間、岩にぶつかる恐怖からカヌーを上流側に傾けてしまったみたいで、何とか持ちこたえようとしたものの、水流に押されてそのまま上流側に沈。
 「また、やっちまった〜」と悔しさが湧きあがるのと同時に、異変に気が付いた。
 左足首が、ひっくり返ったカヌーのシートに挟まって、足がねじれた状態で、カヌーのガンネルにつかまって流されている。
 慌ててその足を抜こうとしたけれど、引っかかったままで外れない。
 恐怖で顔が引き攣った。
 このままカヌーと体が離れてしまったら、挟まったままの足首は脱臼するか骨折するしかない。
 そこで、もう一度、沈するまえと同じ体勢に戻そうと考えて、流されるカヌーの下に逆さまに潜り込んだ。


沈   水中映像
また沈だ〜   水の中に潜ってます (^_^;

 そのおかげで、ようやく足首が外れる。
 両足が川底に付いたので、カヌーを元に戻し、ちょうどそこにいたN野さんに手伝ってもらって、やっと岸に付けることができた。
 かみさんはやや上流で、流れの中に座り込んでいたので、そのままこちらまで泳がせて、ハンドレスキューで拾い上げる。
 カヌーの水抜きをし、気を取り直して最後の落ち込みへと向かう。
 昨日と同じルートで下るつもりが、流れに押されて右岸の岩にぶつかって、そのまま落ち込みに入ってしまった。
やる気なく落ち込みを下る 後でこの時に撮ってもらった写真を見たら、二人ともパドルから手を離し、ガンネルを掴んで、もう完全に試合放棄状態である。
 それでも何とか落ち込みをクリアし、岸に上がって、ようやく一息つく事ができた。
 それにしても、カヌーを始めてから、これだけ怖い思いをしたのは始めてである。
 膝立ちの姿勢で、シートの端にお尻を乗せて座ると、足はシートの下に潜り込むことになる。
 以前から、これがちょっと窮屈に感じて、沈した時にすんなりと抜けられるか気にしてはいたのだけれど、まさかそれが現実になるとは思わなかった。
 右足のふくらはぎは、どこかにぶつけたようでズキズキと痛むし、唇も少し切れていたけれど、その程度で済んだのは不幸中の幸いかもしれない。
 顔を下に向けた瞬間、鼻腔内に溜まっていたのか、大量の水が鼻の穴から流れ出してきて驚かされた。

集合写真 国体コース回避組みが合流し、再度の集合写真を撮って、ここからが空知川例会の本番である。
 でも、国体コースで翻弄されてしまった私は、既に抜け殻状態。
 その先で時々現れる瀬も、何の感動も無く、ただダラダラと漕ぎ下るだけだった。
 今日はカヤックの参加者が多い。
 カヤックと大型のカナディアンでは舟のスピードが違うので、同じようにパドリングしているつもりでも、前のカヤックに追突しそうになったりする。
 小回りも利かないので、岩の多い瀬の中では、周りのカヤックのことなど考えずに、自分のルートを進むしかない。
カヤックで混雑 まるで、大勢のライダーと一緒に、大型トラックを運転しながらツーリングしている感覚である。
 ライダーがこちらに気が付いていれば向こうで避けてくれるけれど、そうでなければ轢き殺してしまいそうになる。
 混雑を避けて、なるべく先頭の方を下ることにした。

 次第に青空が広がってきた。
 太陽が川底の石を、くっきりと照らし出す。
 河畔の木々は緑の濃さを増し、その中からウグイスのさえずりが聞こえてくる。
 何もせず、川の流れに任せて、下っていく。
 瀬の中を下るのも楽しいが、川下りで一番幸せを感じるのは、こんな時である。
 このままの状態でずーっと下り続けられるような川があれば良いのにと思えてしまう。


美しい風景
ずーっとこんな流れが続いていたら最高なんだけど

美しい青空   川底を覗き込む
青い空が気持ち良い   川底を覗きながら下る

 そうして下ってきた噴水の瀬で、幸せな時間は途切れてしまった。
 何時もどおり瀬の手前右岸に上陸して、ほぼ全員で下見をする。
 初めて下る場所ならばともかく、何故かこの噴水の瀬だけは、例会ごとに必ず下見をしてから下っている。
 噴水の瀬への進入ルートはほぼ決まっていて、その後はほぼ真っ直ぐに下るだけで、水量によっては岩が顔を出している程度の違いしかない。
 瀬の状況を見られる場所までは、とても滑り易くて鋭く尖った川底の岩の上を歩かなければならず、瀬を下るよりも、ここを歩く方が怪我をする確立が高そうな気がする。
会長夫妻 そして、瀬の下見を終わった後は「凄いね〜、怖いね〜」と緊張しながら、自分の舟まで戻るだけなのである。
 これならば、下見などしないで、前の人に続いて次々に下ってしまえば良いと思うのだけれど、ついつい下見をさせてしまうような魔力が、この噴水の瀬には秘められているのかもしれない。

 会長夫妻が、この魔力を秘めた瀬を、皆の写真を撮るために真っ先に下ると言う。
 念のために、F本さん一人がレスキューロープの用意をしているけれど、この勇気には恐れ入ってしまう。
 そもそも会長夫妻は、タンデムでこの瀬をクリアしたことが無いとのこと。
 以前にここで沈した時のことが奥さんのトラウマになり、会長が一人で下って奥さんだけがポーテージと言ったことも多かったようだ。
 そんな二人にカメラを向けていると、見事に噴水の瀬を初クリアしてくれた。
 実はこのお二人、前日が結婚記念日だったのである。
 前夜、キャンプ地のどんころでそのことを知り、「それじゃあ明日は噴水の瀬で、結婚記念の豪快な沈でもしてもらって」と冗談を言っていたのだ。
O橋さんの勇姿 そして一夜明け、「今日はどうしようかな〜」と珍しく悩んでいた奥さんが、結局タンデムで下ることに決めたのは、特別な思いがあったのかもしれない。
 ギャラリーとしては、豪快な沈を披露してくれた方が嬉しかったのだけど、お二人にとっては良い記念になったのではと勝手に想像しているのである。

 我が家は、噴水の瀬だけには苦手意識が全く無く、下見を終えた後はドキドキしてしまうのだけれど、何時もどおりに無事にクリア。
 他のメンバーも全員が危なげなく、噴水の瀬を下り終える。
 O橋さんがポツリと、「俺達も随分上手くなったよな〜」とつぶやいていた。
 確かに、会長やO橋さん・私達夫婦は同じ年にこのクラブに入会して、つい数年前までは毎回のように他のメンバーのレスキューロープの世話になっていたのが、今はこうして余裕を持って下れるようになった。
 うぬぼれでは無く、しみじみとした実感なのである。


噴水の瀬   噴水の瀬
正に噴水が吹き上げている   豪快に下る

 ところで、国体コースを回避してスタートしたK−さんとK藤さんは、去年はこの噴水の瀬で豪快な沈をして、その後に見せた笑顔がとても爽やかだったことを、今でもはっきりと覚えている。
 全員が下り終えた後、「あれ〜?何か物足りないな〜?」と思って回りを見渡すと、そのKーさんとK藤さん、今年は誰も気付かないうちにこっそりとポーテージしていたのである。
 まあ、川に慣れるにしたがって危険予知能力も高まってくるものなので、このお二人には来年に期待することにしよう。

 そしてまた幸せな川下りが再開された。
 今年の北海道は不順な天候が続いていて、青空を見ること自体が珍しくなっている。
 真っ青な空に白い雲が浮かぶ風景、それだけで何故か感動してしまう。
 セミの鳴き声も聞こえてきた。
 季節はもう夏になろうとしていたのだ。


空知川最高!

2009年7月12日 曇りのち晴れ
当日12:00 空知川水位(幾寅観測所) 353.97m
写真提供 サダ吉さん



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