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当別川

(一番川付近 ~ 川崎)

 カヌークラブの6月例会は当別川である。
 カヌーフィールドとしてはあまり一般的な川ではないが、春先の雪解け水で増水している今時期ならばカヌーで下れるとの話しだ。
 当別川は一番川オートキャンプ場や青山農場キャンプ場、道民の森などへ向かう道道当別浜益港線沿いを流れている川で、これまでも何回かは車で走りながらその様子を見ているはずである。
 それなのに川の印象があまり記憶に残っていないのは、取り立てて興味が湧くような流れでもなかったのだろう。
 それでも、周りを山に囲まれたこの界隈の風景は以前から好きだったので、この例会を楽しみにしていた。集合場所は、厚田へ抜ける道道との交差点近くにある道民の森青山中央地区案内広場駐車場。
集合場所 余裕を持って集合時間の30分以上も前に着いたのに、既にドライスーツに着替えたメンバーが集まって何やら協議していた。
 今回は青山ダムの下流から20km程の長距離ツーリングが予定されていたが、去年の同じ時期にここを下った人の話ではその時よりも水が少なく時間もかかりそうなので、距離を短縮しようとの相談らしい。
 最近のクラブの例会は、ほとんどが10km前後のツーリングである。小さなカヤックに乗っている人が多いので、それくらいの距離が限度なのだろう。
 カナディアンの私にとってはそれではちょっと物足りなく感じる距離で、久しぶりのロングツーリングを楽しみにしていたのに、やっぱり今回もショートツーリングになりそうだ。
 偵察部隊が戻ってきて、一番川オートキャンプ場入り口付近のやや上流に車が10台ほど停められる適当な出艇場所が見つかったとのことで、当初の予定より5kmほど下流のそこからスタートすることとなった。まあこれくらいの距離なら満足である。
 今日は車の台数だけでも20台近くが集まっていて下る距離も長いものだから、車の移動など出発準備に時間がかかってしまいそうだった。
 それが今回はGさんが軽トラックで来てくれたものだから、それにカヤックをまとめて積み込み、スタート地点へ向かうグループと、ゴール地点に車を回すグループの二つに分かれて行動したので、思っていたよりも早く川下りをスタートすることができた。

いよいよ川下り開始   新緑に染まる当別川

 笹にごりの川にカヌーを浮かべて、いよいよダウンリバー開始。
 川岸の枯れ草などが水の流れによって倒されている様子から見ると、雪解け水による増水もかなり治まってきているようである。
 これならば去年の5月に余市川を下ったときのような事態にはならないだろう。
 河畔のヤナギは既に淡い新緑に染まり、その林床では野草が芽を伸ばし始めているけれど、まだ冬枯れの茶色い風景の方が目立っている。その中で、所々で花を咲かせているエゾノリュウキンカが一際鮮やかだ。
 たまにカタクリやイチゲも咲いているけれど、それらの花は注意深く見ていないとなかなか気が付かない。
 こんな風に、川岸の風景を眺めながらのんびりと下っていくと、たまに変化をつけるかの様に瀬が現れる。
 なかなか喉かな川下りである。
 途中で倒木が川を塞いでいる場所があった。川岸ギリギリを強引に漕ぎ抜ける人もいたが、我が家は無理せずにポーテージ。出艇する時は、段差のある川岸から直接カヌーに乗り込んだので、ここで初めて水の中に足を浸けたことになる。
 雪解け水のために強烈に冷たい。絶対に沈したくないような冷たさである。
 それなのに、OC-1のFさんが何も無いような場所で隠れ岩に引っ掛かり沈してしまった。Fさんは昨日のキャンプで飲みすぎたらしく、スタート時から二日酔いで絶不調の様子だったけれど、これで一気に目が覚めた様子・・・、でもなかった。
 氷水の中に浸かった様な冷たさで、ますます絶不調になってしまったみたいだ。

目の前で沈   笑っちゃ駄目です

 その次に川を塞いでいたのは、倒木ではなくて崩れ落ちた吊り橋であった。
 スタート前にこの吊り橋に注意するようには言われていたけれど、実際にそれを目にすると驚いてしまった。完全に崩れ落ちているのならまだ良いのだけれど、吊り橋を吊っているワイヤーがしぶとく繋がっているので、それが川を塞ぐように横断しているのだ。
崩れた吊り橋 去年の今時期から同じ状態だったそうなので、少なくとも1年以上はこの状態で放置されていることになる。この様な、川の流下を阻害するような障害物は河川管理者が直ぐに取り除きそうなものだけれど、流域に民家があるわけでもなし、この川ではまともな管理が為されていないのだろう。
 管理が為されていない川というのは、ある意味で歓迎すべきものである。河畔林が伐採され、コンクリートの護岸で塗り固められる川よりも、余程好感が持てる。
 ただ、この様な人工的な障害物はやっぱり人工的に取り除いて欲しいものだ。カヌーで下る時には命取りにも成りかねないような障害物なのである。
 幸いなことにこの付近では流れが緩やかになっており、川の中央部では吊り橋が水中に沈んでいるのでその部分を通り抜けられる。
 油断してアリーの底が水中のワイヤーに引っ掛かってしまったけれど、何とか脱出することができた。

川岸の風景 今日は朝から曇り空。下り終えるまでは何とか天気が持ってくれないかと期待していたけれど、ちょうどスタートする頃からポツリポツリと雨粒が落ちてきてしまった。
 本降りとまではならないものの、降ったり止んだりを繰り返しながら下っている最中はずーっと雨が降り続けた。
 ドライスーツを着ているし、川を下っていて濡れるのは全く気にならないけれど、眼鏡に水滴が付くのが鬱陶しい。
 爽やかな新緑の彩り、河畔林から聞こえてくる野鳥の囀り、春の陽射しを浴びながらここを下れば最高に気持ちが良かっただろうと考えると、余計にこの雨が恨めしく思えてしまう。
 川は右へ左へと大きく蛇行し、太陽が出ていないものだから、時々方向感覚を失ってしまう。流れが山にぶつかりそのまま右へ曲がるのかと思っていたら、反対の左へ向きを変えていると言った具合だ。
 途中に一箇所堰堤があり、そこは左岸からポーテージする。
 カヤックのメンバーが2名だけ、その堰堤を直接下り降りた。カナディアンなら直接行けちゃいそうな気もしたけれど、こんな堰堤では無理は禁物である。

堰堤にチャレンジ   堰堤の全景

 岩盤が川を横切り、自然の堰堤のようになっている場所も時々現れた。人工の堰堤よりも波が大きいけれど、危険性はこちらの方がずっと少ない。
 ただ、このようなところでは早めに通過するルートを決めなければならない。そこを超える瞬間に隠れ岩にぶつかったりしたら、あまり楽しくない事態になってしまう。
 水量が多いので隠れ岩に掴まる心配は少なかったけれど、そこを降りた瞬間の返し波も怖い。我が家の最近の沈は、この様な波にあっと言う間にひっくり返されるようなパターンが多いのである。
 身構えながら波の中に突入するとバランスを崩すことも無く無事に通過できたけれど、この緊張感がたまらなく楽しい。
 のんびりと風景を楽しみながら下るのも良いけれど、この緊張感が味わえなければやっぱり物足りなく感じるのだ。

おっと!   チキンコースに逃げてるかも

 雨が小降りになったところで昼食タイムの休憩となった。
 上陸すると、そこには当別ダム建設予定地と書かれた看板が立てられていた。ダムの本体工事はもっと下流の方で始められているが、ダムが完成するとこの付近も水没するのかもしれない。
 この当別ダムについては計画当時から反対運動が強く、公共事業の見直しによりダム事業の再検討も迫られていたようだが、規模を縮小して建設することが最近になって決まり、2012年の完成を目指して工事が進められている。
 水没農地の用地交渉は当初計画に基づき行なわれて、現在は流域の住民も全て退去しているとのことである。
 この様な状況なので、先ほどの様な吊り橋も撤去する必要も無く残されているのだろう。
 いずれにせよ、数年先にはここをカヌーで下ることも出来なくなってしまいそうだ。
 この先は川の様子をしっかりと目に焼き付けながら下ることにしようと気持ちを新たにして、再び下り始める。

楽しい瀬 何となくそれほど瀬のない川だろうと思っていたのだけれど、意外なほど次々に瀬が現れて楽しませてくれた。
 増水気味なので、カヌーの底を擦る心配も無く、気持ちよく下ることができる。
 遊べそうな小さなウェーブもところどころに有るのだけれど、先頭グループがどんどんと先に行ってしまうので、遊んでいる余裕もない。ロングツーリングなので、皆、先を急いでいるようだ。
 やがて瀬も無くなり、穏やかな流れが続くようになってきた。GPSと地図で確認すると、ゴールまではまだ距離がある。
 腕の筋肉にもそろそろ乳酸が溜まってきたみたいだ。
 川はそれなりの流れがあるので、無理して漕がなくてもそのまま進んで行くのだけれど、他のメンバーが一生懸命に漕ぐものだから、こちらも休んでいるわけにはいかない。
 この様な流れの中では、カヌーの中でゆったりと体を伸ばしてその自然環境の中に身を預けながら下るのがカナディアンの楽しみ方である。

のんびり下る当別川

 カヤックやOC-1に乗っているメンバーはホワイトウォーター志向の人が多いので、この様な緩やかな流れは苦痛でしょうがないらしい。
 それに、空模様もますます怪しくなってきたので、余計に先を急いでしまう。
 そうしてようやくゴール地点に到着。
 川を下り終えるのを待っていてくれたように雨脚が強くなってきた。
 どうせならば、もう少しだけ待っていて欲しかった。ほとんどの車はスタート地点に停めてあるので、これからそれをとりにいかなくてはならないのだ。
 30分ほどかけて戻ってくる間にも雨はますます激しくなり、その間ゴール地点で待っていたかみさんはずぶ濡れになっていた。
 雨に打たれた今回の当別川だったけれど、初めて下る川の緊張感に、程よい瀬と早春の美しい河畔の風景を楽しみ、軽く疲労を感じる程度の下り終えた後の達成感も味わい、本当に充実した川下りだった。

2007/5/13 曇り時々雨

エゾノリュウキンカの群落   エゾヤマザクラも咲いている



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