途中で休憩を取りながら下り続け、やがて見覚えのある場所が現れた。問題の「二股の瀬」である。
尻別川のこの区間はラフトコースとも呼ばれていて、2年前のクラブの例会で一度だけ下ったことがある。
その時は、この「二股の瀬」の手前で上陸して入念な下見をしたものだ。下見しているだけで緊張が高まり、口の中がカラカラに乾いてしまったのを覚えている。
今回は皆、下見もせずにヒョイヒョイと下っていってしまう。
私もその後に続いてゆっくりとカヌーを進めるが、視界に入ってきた「二股の瀬」の全貌は、「あれ?こんなものだったっけ?」の印象だった。
私の頭の中には、そそり立つ岩に囲まれた狭い谷間で大波が荒れ狂う地獄のような恐ろしい光景が残っていたのに、目の前にあるのはごく普通の瀬だった。
2年前に下った時よりも、瀬の入り口は岩が絡んでちょっとトリッキーな流れになっていたが、そこも難なく通過。
後は素直な波の上を気持ちよく下っていくだけだ。
子供の頃にやたら大きく見えていたものが、大人になってから見ると意外に小さなものだったりする。そんな感覚だろうか。
その先も、しばらく楽しい流れが続く。
「オッ!」と思うくらいに波が高くなっている場所もあったが、そんな波の中でもやっぱりアリーは安定していた。
やがて流れも次第に穏やかになり、これまでの余韻を楽しみながらのんびりとゴールを目指す。
羊蹄山にかかっていた雲がいつの間にかとれて、雪に覆われた山頂部分が姿を現した。
沈もしなかったし、岩にも乗り上げなかったし、これだけで下り終わった後の満足感が全然違う。一度でもトラブルがあると、素直に「あ〜楽しかった」とは言えないのである。
何となく、去年よりはカヌーが上手くなったような気もする。
今年一年の総決算として本当に満足できる楽しい川下りだった。
しかし、家に帰ると全く満足していない様子のかみさんが待っていた。
タンデムでの総決算をするため、雪が積もる前にまた何処かの川へ行くことになりそうだ。
2005.11.3
川下り当日の尻別川の水位
尻別川喜茂別観測所 252.78m
尻別川倶知安観測所 167.31m |